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トップ > 特集 選ばれる企業になるために デジタル時代の顧客深化論 > コラム
コミュニケーションツールとしての 「デジタル」の役割がいよいよ大きくなっている。より豊かで、より深く、より継続的な関係を顧客と結ぶために、デジタルでできることとは何か──。デジタルコミュニケーションの最新事例を探る!
見込み顧客に対してさらに関係を深め、すでに顧客となっている人たちとは長期的な関係を築いていく。そのために重要なことは何か? さまざまな企業のデジタルマーケティングにも関わってきた上島千鶴氏に、デジタルコミュニケーションのポイントを語っていただいた。
マーケティングとは、見込み顧客と出会い、見込み顧客に商品やサービスを買ってもらって「真の顧客」になってもらうことです。さらにそこから継続的な関係を築いていくことでもあります。では、自分たちの商材を買ってくれる見込み顧客は誰なのか。それを見極めることは、かつては営業担当者に委ねられていました。例えば、腕のいい営業担当が地道に情報を集め、商談が成立する可能性のある会社に何度も足を運んで契約にこぎつける、といったやり方です。しかしデジタル時代になった今、売る側は発想を大きく変えなければなりません。
インターネットが普及して以降、商品やサービスに対して興味を持っている見込み顧客は、自ら検索し、自ら学習した上で購入を決めるようになっています。つまり、見込み顧客の方から企業にアプローチしてくるようになったわけです。
したがって、売り手にとって最も大切なのは、見込み顧客と出会う「デジタル接点」をいかに持つかということになります。デジタル接点で、自社の特徴や商材について分かりやすく説明し、商材の魅力を理解してもらい、購入意向に確実に結び付ける。そんな発想が欠かせなくなりました。そこで重要になるのが、情報を伝えるためのコンテンツです。
最近では、コンテンツを重視するマーケティングを「コンテンツマーケティング」と呼んでいます。これは見込み顧客にアクセスしてもらうという点では「インバウンドマーケティング」であり、見込み顧客との関係構築を目指すという点では「リレーションシップマーケティング」です。コミュニケーションにデジタルを利用しているという意味では「デジタルマーケティング」ともいえます。いずれも、「デジタル接点を起点として見込み顧客との関係を深める」という点では同じといっていいでしょう。
デジタル接点から見込み顧客との関係を築いていくには、BtoCであればカスタマージャーニー、BtoBであればバイヤージャーニーを上手に設計する必要があります。その「旅程」に沿って、見込み顧客との関係を深め、顧客となってもらうことを目指すわけです。
そのジャーニーの設計に不可欠なのがコンテンツです。コンテンツには明確な「意味」と「目的」がなければなりません。見込み顧客が購買を決定するプロセスのどこにどのようなコンテンツが必要なのか。そのコンテンツに含まれるべきメッセージとは何か。ターゲットによってその内容をどう変えていけばいいか──。そのような問いの先にあるただひとつの目的は、「事業に貢献し、売り上げを上げること」です。
もちろん、企業ブランディングを主要な目的とし、直接的な売り上げに結び付くことを目指さないコンテンツもあり得ます。しかしその場合でも、「企業イメージのみが伝わって、企業名が具体的な商材に結び付かない」といった結果になることは避けなければなりません。短期的か長期的かといった違いはあっても、最終的に売り上げにつながるコンテンツでなければ意味はない。そう考えるべきです。
見込み顧客は、実際の購買行動までの距離によっていくつかの段階に分けられます。私はそれを、購買にはほど遠い「まだまだ客」、ある程度距離が近くなり、数年後には顧客となってくれる可能性がある「そのうち客」、すぐにでも顧客になってくれそうな「今すぐ客」の3つに分類しています。そのそれぞれの見込み顧客には、それぞれ異なるコンテンツによってアプローチする必要があります。また、すでに顧客になってくれている人たちとの関係を深め、売り上げ単価を上げることを目指すためのコンテンツも独自に用意する必要があります。
コンテンツが売り上げに結び付くということは、そのコンテンツがお客さまの課題解決に役立っているということにほかなりません。「いい情報をありがとう」と言ってもらうだけのコンテンツから、お客さまの課題を解決し、自社に確実に売り上げをもたらすコンテンツへ。それがデジタルマーケティングにおけるコンテンツ活用のポイントであると私は考えています。