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ITのチカラ Vol.8 車載ソフトウエア開発サービス

自動車向けソフトウエアプラットフォームの開発を行うAPTJ社に参画し、車載ソフトウエア開発事業を加速するキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)。これまでの取り組みと今後の方針を、キヤノンITS インダストリーシステム事業本部の橋本真幸、雨宮佑樹、APTJ 開発部の川村和義、品質保証部の佐藤友紀が解説する。

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  • 2017.12.01

[Vol.8] 車載ソフトウエア開発サービス

インタビュー須田義大さん(東京大学 生産技術研究所 教授 次世代モビリティ研究センター長)技術の成熟を背景に、高まる車の自動運転実用化の機運
今後は自動車とインフラの連係が重要課題に

近年、注目が高まっている車の自動運転。現在は部分的に自動運転が可能なレベルまで進化しており、今後は特別な場合のみドライバーが対応するものや、原則としてドライバーの対応が不要な完全自動運転の実用化へ向けた開発も進んでいる。技術進化の背景や現時点の課題について、東京大学 次世代モビリティ研究センター長の須田義大さんに聞いた。

写真:須田義大 さん 東京大学 生産技術研究所
教授 次世代モビリティ研究センター長
須田義大 さん
1959年東京都生まれ。87年東京大学大学院修了、工学博士。法政大学を経て90年に東京大学生産技術研究所助教授、2000年より同教授。14年より次世代モビリティ研究センター長。車両制御動力学などに関する研究に従事。ITS Japan理事、自動車技術会理事・フェロー、日本機械学会フェロー。

―― 現在の都市と交通が抱える問題点を教えてください。

自動車に関する課題は大きく2つあります。1つは交通安全です。交通事故死者数は依然として年間4000人近くに上っていますし、最近は高齢ドライバーによる事故も話題になっています。もう1つは環境負荷の低減です。この点、渋滞も非常に大きな問題で、時間的損失だけでなく車の燃費を悪化させる要因でもあります。これらの解決策として特に期待されているのが、自動運転技術なのです。

―― 自動運転技術が急速に進化している背景には何があるでしょうか。

過去20年ほどにわたり、ドライバーや車と道路などのインフラを情報通信技術で結び付ける取り組みは、着実に進んできました。実用化した技術も多く、例えばETCによって料金所渋滞は解消されています。

近年、注目を集めている自動運転は、いわばこれまでの取り組みの「集大成」なのです。かつて自動運転は技術者にとって夢のようなものでしたが、技術の成熟により急速に実用化への機運が高まっている状況といえます。

例えばさまざまなセンサーが低コストで利用できるようになったことで、それらから大量のデータを取得できるようになり、AI(人工知能)も進化しています。一般道などでの実証実験が実施され自動運転の実現性も示されていますし、グーグルが参入した影響も大きいでしょう。社会的背景と最新技術がマッチしたのだと思います。

―― 自動運転実現のためにはどんな技術が必要ですか。

車を走らせるために人間が行っているのは環境を「認知」し、どうすべきか「判断」して、車を「操作」することですから、これらを自動化する技術があればよいわけです。最も容易なのは「操作」で、すでに速度を一定に保って走る「クルーズコントロール」などは実用化されています。「認知」「判断」はまだ難しいのが実情ですが、これもAIなどの技術進化により着実に進んできています。

―― 自動運転の実現に関して、技術以外に課題はあるのでしょうか。

最も大きな問題は、ドライバーと車とインフラが独立していることです。例えば鉄道の場合、安全性が非常に高く渋滞の問題もありませんが、これは線路、車両、乗務員などを1つの鉄道会社がコントロールしているからです。この点、自動車は車、道路、信号、それぞれの管理者が異なり、トータルでコントロールできない状況にあります。

特に車とインフラとの連係をどうするかは大きな課題といえます。現時点でもまだ、車に自律自動運転させるのは難しく、GPSやデジタルマップが整備されている必要があります。信号についても、信号の色を車側がカメラで認識するよりも、信号と車が直接情報をやりとりできる方が効率的ですが、そのためには新しい仕組みが必要です。さらに、こうした連係が進み、常にインフラと情報をやりとりするようになると、サイバーセキュリティー対策も対処すべき問題として浮上してきます。

このように課題はまだ山積していますが、オリンピック・パラリンピックも開催される2020年に向け、国内での自動運転車の開発は加速しています。完全な自動運転車の実用化にはさらなる時間が必要ですが、例えば過疎地で運転免許を返上した高齢者の移動手段の確保のため、政府は自宅と最寄り駅の間など短距離を想定した「ラストワンマイル自動運転」の実現を目指しています。また、有人運転の物流車両に無人の自動運転車が後続するといった方法で無人運転の有益な実用化も模索されています。

今後、自動運転技術の進化により、社会全体が大きく変わっていく可能性は高いでしょう。

キヤノンITソリューションズの「組込みソリューション」

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    自動車を含む多様な機器で増加する

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