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2017年の潮流を読む
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  • 2017.03.01

2017年の潮流を読む

2016年振り返りと2017年のトレンドを読む

2016年、アメリカ大統領選の影響が大きく世界を動かした。価値観の多様化により拍車が掛かり、仕事の現場では女性リーダーの進出や、働き方の変革が始まった。私たちの生活、消費環境はどのように変わるのか。2017年のトレンドを『日経トレンディ』編集長 伊藤 健さんに伺った。

まず2016年を振り返ってみると、ヒットの潮流が劇的に変わった年でした。『日経トレンディ』のヒット商品ベスト30では、上位に「ポケモンGO」「君の名は。」「インスタグラム」「メルカリ」が入っています。これらに共通しているのは、スマートフォン(以下、スマホ)発のコト消費であること。スマホを介してゲームをし、インスタグラムで写真を共有し、ネット上で気軽にフリマを楽しむ、“スマホファースト消費”とも言うべき現象が起きました。映画『君の名は。』も、試写会で多くの人を集め、作品を見た若者がSNSで感想を発信し、話題が広がったことで人が人を呼びました。

消費の主役に“若年層”が入ってきたのも劇的変化です。「インスタグラム」や「メルカリ」は、若者と女性に大ヒット。「ポケモンGO」も若者をしっかり取り込みながら、40~50代まで支持層を広げました。

エンタメ
2016年大ヒットした東宝の2作品『シン・ゴジラ』と『君の名は。』。SNSで情報が爆発的に拡散した。

  • 写真:シン・ゴジラ

    『シン・ゴジラ』Blu-ray 特別版 3枚組
    3月22日(水)発売。6,800円+税
    発売元・販売元:東宝
    Ⓒ 2016 TOHO CO.,LTD

  • 写真:君の名は。

    Ⓒ 2016「君の名は。」製作委員会

今年は“スマホフリー” AI家電が新市場を形成する

“スマホ発” “コト消費” “若年層”といったキーワードはずっといわれてきたことですが、それが顕在化したのが16年でした。大きな変化なだけに、今年もこの傾向は続くと思います。

もっとも、“スマホ発”はワンステップ進み、“スマホフリー”が今年の一大キーワードになると予想しています。スマホファースト消費がメインの今、各社がしのぎを削るのは、スマホを使わずに人やモノ、情報との接点を持てるツールです。AI(人工知能)連動型の家電はその代表格。音声認識技術により、話し掛けるだけでユーザーの意図を組んだアクションを起こしてくれる機器のことで、『日経トレンディ』では「ノールックAI家電」(スマホを見なくていい家電という造語)と呼んでいます。例えば米国で300万台以上を販売した「アマゾンエコー」は筒状のシンプルなもの。「洗剤がなくなった」と話し掛けるだけで洗剤が自宅に届き、天気や行きたい場所を尋ねれば教えてくれるといった、AI系のサービスも受けられます。家事や食事をしながらでも求めている情報が手に入るため、スマホより利便性が高く、徐々に生活に浸透していくでしょう。

また、「ヒアラブル」(ウエアラブルと「聞く」のヒアを合わせた造語)は、家の外でもスマホ自体の操作なしでAIとやり取りできる機器。耳に装着し、動作や声によって意思を伝えるだけ。アップルの新しいブルートゥースヘッドセット「エアポッド」は、イヤホン部分を2回叩くだけでSiri(シリ)が起動。「新着メールを読み上げて」と伝えればすぐに応えてくれます。また「iPhone7」からイヤホン端子がなくなり、ブルートゥース接続の必要度が増しましたが、思いのほかユーザーの受け入れは速く、ブルートゥース機器は活況。他社も追随し、うなずくだけで「YES」「NO」の操作ができる、モーションセンサー搭載のヒアラブルも登場しています。今後、ヘッドホン・ヘッドセットの巨大市場で、ヒアラブルが相当な割合を占めるでしょう。

  • 写真:小売り 小売り
    新サービス「Amazon Go」はレジ精算が省略されたスーパーマーケットだ。現在は米・シアトル本社社員向けに実証実験中。2017年一般向けの店舗展開予定。
  • 写真:家電 家電
    「Amazon Echo(アマゾン エコー)」はクラウドを通じてAIとつながり、他社の家電製品とも連携可能。米国と欧州一部の国のみの提供で、日本への導入は未定。
  • 写真:スポーツ スポーツ
    アクアリングが独自開発したボルダリングコンテンツ「WONDER WALL」(上)。高層ビルの非常階段を駆け上がる「垂直マラソン」(下)。
  • 写真:飲食 飲食
    ブレンドが展開する新サービス「Tasty Table」は入手困難な食材も使い切れる量だけ届き、詳細なレシピで簡単にワンランク上の料理が手軽に作れる。
  • 写真:時短 時短
    洗濯物を専用の袋に入れて預ければ、洗濯・乾燥を行いきれいに畳んでくれるサービスを、アピッシュの「WASH&FOLD」が展開する。

インスタニーズに応え新たなサービスがスタート

インスタグラムのユーザーは、写真を撮るために外食し、買い物をし、旅行に行くといわれるほど。写真アップを目的に消費を重ねているわけです。そのニーズに応えるため、「見栄えする商品」の競争が激化しています。そこに加わったのが、昨年に誕生した「テイスティーテーブル」と呼ばれる新サービス。「ハレの日の料理」を調理する食材を、レシピと共に宅配するキットで、米国では「ミールキット」と呼ばれていて大人気。日本でも、若い人や共働き世帯などの支持を得そうです。一度で使い切れる量が届き、自炊が苦手な人でも受け入れやすい分、料理に自信がなくてもホームパーティーで振る舞えますし、外食はおっくうだけどちゃんとした料理を食べたいときにも使えるので、家事の負担軽減にもなります。

「働き方改革」がテーマに掲げられ、今年は長時間労働の見直しが進み、仕事や家事の効率化は個々の課題になりそうです。そこで注目しているのが、「都市型ソーシャルランドリー」。"昭和の雰囲気"が残るコインランドリーとはまったく違い、カフェや書店などの異業種と提携し、お茶を飲んだり、イベントに参加したりと、洗濯が終わるのを有意義に待つことができます。洗濯代行サービスを取り入れるところもあり、時間を得たい共働き世帯にはありがたいサービスでしょう。

東京五輪に向けたスポーツの動きも活発です。ウエアラブルとフィットネスジムを融合させた「燃焼系ウエアラブルジム」は、「挫折しない」「痩せる」「安い」を満たすジム。若者を取り込む要素がいっぱいです。また、「垂直マラソン」は、高層ビルの非常階段を駆け上がり、タイムを競う変わり種。今年は本戦の開催が決まり、SNSでの拡散が期待できます。さらに、五輪の追加種目となる「ボルダリング」は専用ジムが次々オープンしてファンが急増。今年はそこにテクノロジーを組み合わせ、AR(拡張現実)の技術を活用した「ARクライミング」が登場し、話題になりそうです。

2017年、映画のような想像の世界だったものが、テクノロジーの力で実現するかもしれません。

日経BP社 『日経トレンディ』編集長
伊藤 健さん
日経ホーム出版社(現・日経BP社)入社後、『日経トレンディ』編集部に配属。その後、デジタル情報誌『日経ゼロワン』のリニューアルに携わり、2002年に『日経トレンディ』に復帰。副編集長を経て14年、編集長に。毎年、『ヒット予測ランキング』『ヒット商品ベスト30』を監修している。

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