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マーケティングには市場調査が欠かせません。調査データを分析し、キーワードを導き出し、それを基に商品やサービスを開発していく。それがマーケティングの一般的な方法です。しかし、市場調査は実は現状のスキャンにすぎません。「現在」を知るという点で調査は不可欠ですが、そこから「未来」を生み出すには大きなジャンプが必要です。そのジャンプを可能にするのが デザイン発想 であると私は考えています。ビジネスがBtoBであってもBtoCであっても、あるいは新たに生み出すものが商品でもサービスでも、はたまた事業モデルであったとしても、重要なのは“人の心を動かすこと”です。心は理論や理屈では動きません。感覚によって動くものです。その感覚に働き掛けるのがデザインなのです。デザインとは、色や形だけを意味するわけではなく、「何のためなのか」「誰のためなのか」を徹底的に考え、それを多くの人が納得できるコンセプトや製品に落とし込んでいくことです。例えば経営者の仕事は「会社の未来を描く」という点で、まさにデザインであるといえます。ビジネスの枠組みが大きく変化していくこれからの時代には、企業の仕組みにデザイン発想を組み込んでいくことが必須になるのではないでしょうか。
昨年日本を訪れた外国人は2400万人に上ります。しかし、外国人観光客の宿泊先の多くは、東京や京都などの大都市と北海道に集中しています。日本には魅力的な地域がたくさんありますが、一部の有名観光地や都市以外はまだまだ世界的な知名度は低いようです。今後、日本が世界の旅人たちから選ばれる観光大国となっていくためには、これまで知られていなかった地方を 旅先(デスティネーション) として選んでもらうためのマーケティングが欠かせません。さらに、もう一つ重要な視点は、「欧米豪の観光客の取り込み」です。現在、日本を訪れている観光客の80%はアジアの人々ですが、世界的に見ると、最も旅行に日数とお金を掛けているのは、欧州、米国、オーストラリアの人たちです。旅慣れた欧米豪の旅人は、大都市だけでなく、トレッキング、スキー、歴史、工芸、食、農家民泊といった、日本の地域の体験にも関心があるので、地方にとってはむしろ「爆買い」よりもチャンスがあると言えます。いま日本に来てくれているアジアの観光客に加えて、日本の「地方」の魅力と「欧米豪の旅人」をつないでいく仕組みをどうつくるかが重要であり、それによって観光に付随する広範なビジネスが活性化していくと考えています。
多くの企業ではこれまで、マーケティング部門と営業部門のデジタル化が個別に進んできました。Webサイトやイベントなどのマーケティング接点で得たデータと、得意先訪問などの営業接点で集めたデータを、それぞれ別々に導入したシステムで運用してきたわけです。
そのやり方を改め、部門やシステム単位ではなく、顧客(アカウント)単位でデータを統合。各部門が連携し、顧客の売り上げの最大化を目指す「 アカウントベースドマーケティング(ABM) 」の考え方が、この数年、日本企業の間にも広まってきています。自社にとっての重要顧客を選定し、ターゲットとなる顧客ごとに自社が保有する情報を一元化します。その顧客にどのような提案をし、どのような商材を提供すれば良いか。最適解を導き出して継続的にアプローチすることで売り上げを上げていく──。それがABMの基本的な考え方です。
このABMを実現するための前提となるのが、データの管理・統合です。これまでは、あらゆる“情報”が“人”に結び付いていたため、顧客企業のキーパーソンが異動するとターゲットを見失うといったケースが少なくありませんでした。そこで、当たり前のようですが、データの整理・統合と管理・更新を続け、顧客企業を全体でカバーするデータマネジメントが必須になるのです。
データマネジメントではまた、情報システム部門が重要な役割を果たすことになります。より精度が高く、使いやすいデータを整備するには、システムのノウハウが必須だからです。データの精度・分析が向上すれば、提案のクオリティーが上がり、結果、売り上げの伸びも期待できます。その意味で、データマネジメントは、システム部門が企業の成長に大きく貢献する取り組みであるともいえるのです。
さらに、データマネジメントによって一元化されたデータは、新たなテクノロジーとの組み合わせによって、さらなる成果をもたらす可能性があります。その一つが、いわゆるAI(人工知能)を使った「 予測分析(Predictive Analytics) 」です。これは、データの関連性を分析し、「どの商材がどの顧客に売れるか」「最も顧客単価が高いセグメントはどこか」「最も成約の可能性の高い企業はどこか」「今後の自社商品の売り上げはどう推移していくか」といったことを自動的に予測するマーケティングの新しい手法です。米国ではマーケターが、これを活用して効率化を図る例も出ているようです。
データの管理・統合とテクノロジーとの組み合わせが、企業のマーケティング活動の明暗を左右する時代になったと言っていいでしょう。