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トップ > イノベーション [Vol.1] 小学生の文房具 > P2
業界や市場に革新をもたらした製品などを取り上げ、世の中に受け入れられた背景などを紹介します。そこには、新たなイノベーションにつながるヒントがあるかもしれません。
初回は小学生の間で話題となった文房具に注目しました。
かつて車が大人のステータスだったように、筆箱が子どもたちのステータスになっていた時代がある。1965年に発売された「アーム筆入」(サンスター文具)は、その代表例だろう。「象が踏んでも壊れない」をキャッチフレーズに、筆箱を象に踏ませて“魅せた”CMは多くの人に衝撃を与えた。大ヒットの要因はCMだけでなく、それを裏付ける素材にもあった。それまでプラスチック筆箱に使われていたスチロール樹脂ではなく、強度の高いポリカーボネートを使ったのである。実はこの素材、信号機に使われているもので、開発担当者は、暴走族が石を投げても壊れない信号機を見て、筆箱に使うことを思いついたのだという。子どもが筆箱を机から落とすたびに買い替えを迫られていた親たちは、アーム筆入が救世主に見えたに違いない。
冒頭で触れたクルトガのように、子どもが初の“指名買い”に走ったのも、筆箱だった。1975年頃に登場した多機能筆箱がそれだ。片面開きからスタートしたマグネット式がその後、両面、3面、果ては9面までエスカレートし、さらにはボタンまで加わったりと、変化の連続。ボタンをタッチした途端、四方八方から収納スペースが飛び出す姿は、筆箱というより“ロボット”のようで、男児の心をわしづかみにした。
一大ブームを築いた筆箱だが、ファミコンの席巻により、1980年代以降は子どもたちのステータスがファミコンへと移行する。そして筆箱は、かつて木箱や缶箱を筆入れにしていたときのように、缶や布製のアナログ路線へ戻っていく。しかし最近は、“立てて置ける”という付加価値付きの布製ペンケースが大うけ。アナログなどと侮るわけにはいかない。行きつ戻りつしながらも、文房具は確実に進化を続けている。