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トップ > イノベーション [Vol.2] 男性の美容 > P2
肌や身だしなみを整えることは、今や一流ビジネスマンになるための必須要素。スキンケアは、ひげそりと同じ毎朝の習慣になりつつある。「男は外見より中身」といった価値観が浸透していた日本の社会で、男性美容の市場はどう移り変わってきたのだろうか。
男性美容の大きな転機は、バブル崩壊後の2000年代前半に訪れた。2001年創刊の『LEON』が提唱したファッション「ちょいワルおやじ」を機に、中年男性の外見磨きへの投資が支持され始めたのだ。
同時期、海外では百貨店の男性化粧品売り場に注目が集まっており、世界市場をリサーチしていた伊勢丹は2003年、メンズ館リニューアルオープン時に男性化粧品フロアを新設。すでに百貨店で展開していたアラミスをはじめ、クリニークなど海外ブランドのメンズラインを一堂に集めた。
米国で流行した男性像「メトロセクシャル」にも後押しされ、男性が化粧品を百貨店で購入する――という潮流が一般的に。
2004年に国内初、男性化粧品の百貨店取り扱い向けブランド「シセイドウ メン」(資生堂)が発売開始、百貨店ラインアップのメンズライン競争は激化していく。保湿やUVケアなどの必要性もうたわれると商品が細分化され、男性化粧品がドラッグストア市場にも広がり、スキンケアの習慣が根付いていった。
2000年代には、ニオイケアの重要性にも注目が集まる。1999年に資生堂が加齢臭の原因物質の発見とニオイのメカニズムを解明し、2001年にデオドラントスプレー「Ag+」を発売。その後他社は20代やミドル層のニオイのもとを解明するなど、年齢に応じた製品の開発などで差別化を図る。ロート製薬は、大人の乾燥肌がニオイのもととなる皮脂を過剰に分泌させている点に着目。2013年、皮脂の分泌を抑制する「デ・オウ」の全身洗浄料と全身化粧水がヒットを放った。
最近は幼少期に母親から肌の手入れをされて育ってきている男性も増えており、そのような男性は、肌のメカニズムにも詳しく、美容の情報収集に余念がない。メーカー側の戦略もここ数年は、成分や機能を前面に打ち出す方向へと変わっている。
清潔感を印象付けられる「美肌」は、男性が見た目好感度を上げる武器にもなる。肌を整える「BBクリーム」の男性版が登場し、ベースメイクに関心を寄せる男性も。さらなる市場の拡大が期待できそうだ。