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トップ > イノベーション [Vol.3] 雑誌の付録 > P1
今や雑誌に付録が付いてくるのは当たり前。2001年に付録の基準が大幅に緩和されたことで付録のクオリティーが上がり、雑誌業界は付録競争を強いられてきた。しかし近年は「付ければ売れる」段階は過ぎ去った感もある。雑誌付録の過去と現在を追った。
雑誌の付録は、明治時代までさかのぼる。1877年創刊の児童雑誌『穎才新誌』が、投稿文など本誌では収まりきらない企画を別冊付録で紹介したのが始まりだ。1889年創刊の『小国民』は「すごろく」を付録に。少年雑誌の創刊ラッシュを受け、各誌、付録を付けることで差別化を図った。
昭和に入ると雑誌が大量創刊され、付録は豪華さを増していく。1931年『少年倶楽部』の「紙模型」(ペーパークラフト)はドイツの大型飛行艇ドックス号を付録に。組み立てで作れる付録の域を超えた精巧さが話題になり、38万部を完売した。その後も名古屋城、エンパイア・ステート・ビルディングなど、さまざまな紙模型を考案した。
大人向けの雑誌では、婦人誌が付録に注力。1917年には『主婦之友』が先駆けて、別冊付録で占いを添付。次第に添付回数や種類が増え、1934年に「十五大附録」で勝負に出る。新聞広告に「主婦之友をお買いになる方は、風呂敷をお持ちください」と載せ、世間を驚かせた。
高度経済成長期を背景に、大ヒットを放ったのが、学年誌『1~6年の科学』の付録だ。雑誌とセットで付けていた付録の中心は、「望遠鏡」「顕微鏡」「カメラ」といった本格的な実験器具。おまけとして添付するのではなく、雑誌の内容を補完する付録として唯一無二の存在になった。
実は雑誌には、日本雑誌協会の自主基準(雑誌作成上の留意事項)があり、配送を考慮して付録のサイズや重量、使える材質などが細かく定められている。『1~6年の科学』は学校で直接販売していたため、流通ルールに従う必要がなかったのだ。
1990年代に入り、パソコンが家庭にも普及すると、付録にフロッピーディスク、CD-ROM、DVDなどの記録メディアが登場する(付録の基準から外れるためムック扱いで刊行した時代も)。もっとも、それ以前もカセットテープやビデオテープ、その昔はソノシート(薄いレコード)といったメディアは付録に多用されていた。1959年「音の出る雑誌」を謳い文句に発行されたソノシート付き『月刊朝日ソノラマ』は、後にテレビアニメの主題歌などを収録し、子どもたちの支持を得た。