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トップ > イノベーション [Vol.5] 洗濯用合成洗剤 > P2
経済成長を背景に、合成洗剤は本格的な発売から約10年でせっけんの生産量を上回った。一方、河川の発泡などにより安全性を疑問視する声も生まれた。環境や安全への関心が高い消費者を納得させるべく、技術開発に注力した合成洗剤業界の歩みを追った。
80年代は、粉末合成洗剤の小型化も進んだ。かねてから中身を濃縮し、少量でも十分な洗浄力を発揮するよう性能が高められていたが、「少ない量でも十分汚れが落ちる」という訴求をすることが難しく、小型洗剤を発売するのに二の足を踏んでいた。
この状況を打破したのが、87年に花王が発売したコンパクト洗剤「アタック」である。「バイオテックス」という新たな洗浄成分が実現する「わずかスプーン一杯で驚きの白さに」というベネフィットをキャッチコピーとして全面に打ち出したことで、少量で十分という認識を消費者に浸透させ、小型洗剤の先駆けとして市場に受け入れられた。省エネ・省資源ムードも追い風となり、同品はそれまで圧倒的シェアを占めていた「無りんトップ」を追い抜き、1位の座を獲得。小型化への動きは活発化し、今やコンパクト洗剤は世界の業界標準になった。
2000年代には、部屋干し時の生乾きのニオイを防ぐ「部屋干しトップ」(ライオン)や、洗剤と柔軟剤を一つにした高付加価値商品も登場。そして10年代に入ると、合成洗剤の主流が「粉末」から「液体」へシフトする。それまで、液体は酵素や漂白剤といった配合成分の安定性を確保できず、洗浄力を重視するならば粉末が有利とされていた。そうした欠点を補う技術革新の先鞭をつけたのが、09年発売の超コンパクト液体洗剤「アタックNeo」(花王)だ。
粉末合成洗剤の小型化が進んだ際、業界では少量でも洗浄力を発揮する非イオン系界面活性剤を用いる傾向にあった。花王は液体化に当たり、低温でも固まらない新活性剤「アクアWライザー」を開発。従来の活性剤より水性部が大きく、汚れに素早く吸着し乳化しながらも、活性成分自体は繊維に吸着しにくい。高い洗浄力を維持しつつ泡切れ良く仕上げ、「すすぎ1回」を可能にした。翌年にはライオンが、「トップNANOX」を発売。液体洗剤はエコブームを背景に、市場の主力製品へと成長する。
近年は、香り、除菌、漂白など新たな高付加価値商品が誕生、差別化が難しくなっている。合成洗剤が洗濯機と共に普及したことを思えば、洗濯機の著しい進化にも新たな切り口を見いだすヒントがありそうだ。