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トップ > ITのチカラ [Vol.16] 食品ロス削減のためにITが果たす役割 > P1
食料自給率の低さと食品ロスの大量発生は大きな社会課題だ。世界の人口が増加し食料需要が高まる中、食料の確保が困難になることも予想される。SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みという観点でも食品ロス削減は必須だ。そこでITが果たす役割について、みずほ総合研究所の堀 千珠さんに話を聞いた。
今回のポイント
ソリューションレポート
――日本は食料自給率の低さが、長年課題とされています。どのような背景があるのでしょうか。
そもそも日本は国土が狭く、アメリカやカナダ、オーストラリアといった国のように大規模農業を展開しにくいという問題があります。またカロリーベースでみた食料自給率は38%と諸外国に比べて低いのですが、これは比較的カロリーが高い畜産品の生産においてトウモロコシなどの家畜の餌を輸入に頼っていることが主な理由です。また、日本の消費者が穀物、畜産品、水産品、野菜、果物などをバランスよく消費する中で、国内生産量が少ない品目は、輸入で供給を補うしかありません。こうした事情が、カロリーベースの食料自給率を押し下げる要因になっています。
日本では人口減少が進んでいますが、世界全体では人口は増加傾向にあります。特に日本と食文化が近いアジア諸国では、人口が増えるだけでなく所得水準も上昇していますから、日本を含むアジア諸国間の食料獲得競争は今後厳しくなるでしょう。すでに一部の水産品では、中国の富裕層拡大により日本が買い負けているともいわれます。一方、国内の食料生産をみると、高齢化にともなって農水畜産業者の減少が進んでいます。日本は、輸入品と国産品の両方で食料を調達しにくくなることが懸念されます。
――まだ食べられる食料が廃棄される「食品ロス」の削減が課題になっていると聞きます。日本の現状について教えてください。
食品ロスは「もったいない」というだけでなく、ゴミとして焼却処理されることによる費用の発生や二酸化炭素の排出にもつながる問題です。世界的にも、「SDGs(持続可能な開発目標)」の観点から、食品ロス削減への取り組みが重要視されています。
政府の統計によれば、2016年度に発生した食品廃棄物等の総重量2759万トンのうち、643万トンが食品ロスに相当すると推計されています。内訳は、食品関連事業(食品製造・卸売・小売業、外食産業)で発生する規格外品・返品・売れ残りや食事の食べ残し等の「事業系食品ロス」が352万トン、家庭で発生する食べ残しや手つかずの食品等、「家庭系食品ロス」は291万トンです。
これまで日本の食品業界では、消費者の多様なニーズに応えるという観点から期間限定商品や特定の小売りチェーン専用商品などが多数開発されてきました。しかし、こういった商品は、限定期間を過ぎると販売できませんし、特定チェーンで売れなかったときに他の小売店に回すことができません。また、日本の消費者が商品の細部にこだわるとの見方から、小売店によってはパッケージが少しへこんでいるだけで、商品をメーカーや卸売業者に返品することもあります。この他、消費者が食品を買う際に賞味期限が長いものを選ぼうとすることにより、先に製造されたものが売れ残る現象も見られます。こうしたさまざまな要因によって売れ残りや規格外品などが廃棄されているのです。
世界における食料需要量の予測と、日本の食料自給率と食品ロスの現状
① 世界の人口は急増
② 世界の食料需要量も激増
③ 主要国の食料自給率の比較
④ 日本の食品ロス(可食部分)の内訳
⑤ 日本の食品ロスの経年変化
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