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デジタルカメラの分野で長年高い支持を得ているキヤノンは、そのキーデバイスである撮像素子「CMOSセンサー」のメーカーでもある。これまで自社製品のために開発・生産してきたキヤノンだが、その販売をついにスタートさせた。その狙いはどこにあるのだろうか。

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  • 2019.03.01

Episode.24 「CMOS SENSOR」

検査などの産業用途から宇宙・天文や医療まで

そうした"突き抜けた技術"は、どのような分野で生かされるのだろうか。川野は、「現在は産業機器が中心で、工業製品の検査などでは超多画素やグローバルシャッターが求められています。例えば、4K、8Kといった高精細ディスプレイの製造現場では、ディスプレイの画素数より多画素のCMOSセンサーを搭載したカメラであれば、一度の撮影でディスプレイの画素全てを検査できます。また、製造ラインのベルトコンベアを高速で流れる部品は、グローバルシャッター機能を搭載したカメラでなければ画像が歪んでしまい検査になりません」と話す。

キヤノンのCMOSセンサーは、こうした領域で存在感を示し始めている。さらにその用途は産業分野以外にも広がっていると、安田は話す。

「例えば農業です。約1億2000万画素のCMOSセンサーを積んだ人工衛星を打ち上げ、宇宙から広大な農地での農作物の生育状況をチェックするといった用途が考えられています。CMOSセンサーの多画素化が、農業の在り方を変える可能性もあるのです」

超高感度についてはどうだろう。暗闇でも撮影できると聞くと、防災や防犯といった用途が思い浮かぶが、宇宙・天文、さらに医療といった分野での活用にも可能性があると桐山はいう。

「超高感度CMOSセンサーを大型の天体望遠鏡と組み合わせて使うことで、これまで観測が難しかった暗い星の観察や、天文現象の撮影ができるようになります。また、これまで超新星爆発のような現象を動画で撮影するのは不可能だと考えられていたそうですが、誰も取り組んでいなかったことがキヤノンのCMOSセンサーで可能になれば、天文学の進歩に貢献できるかもしれません」

医療分野でも、これまでは極めて微弱で捉えられなかった発光を、超高感度CMOSセンサーで計測できるようになれば、新しい試薬や検査機器の実用化につながる可能性があるという。

"突き抜けた技術"が新たな市場を切り拓く

産業用ロボットや自動運転など、技術革新が進んでいる領域では、"機械の眼"としてCMOSセンサーのニーズは確実に高まっていくだろう。さらに現在は誰も見い出していない領域においても、新たなニーズが生まれる可能性も大きい。

安田は、そうした兆しを日々、感じていると話す。

「これまでCMOSセンサーを必要としなかったような企業からお声掛けいただくことが増えていますし、思ってもみなかった利用方法を相談されることも少なくありません。かつてのデジタルカメラやスマートフォンがそうだったように、3年後、5年後には全く新しい市場が生まれ、驚くようなスピードで成長している可能性も十分にあると考えています」

未来を見据え、誰も想像できないようなニーズをいち早く捉え、製品やソリューションとして提供するのは容易ではない。だが、新たな市場が求めているものを提供するには、それを支える確かで高い技術力が必要であることだけは間違いない。そして、キヤノンには長年デジタルカメラの世界で常にCMOSセンサーを進化させ、培ってきたその力がある。

キヤノンの"突き抜けた技術"は、これからどのような新しい市場を切り拓いていくのだろうか。

画像:CMOSセンサーの適用領域の広がり

CMOSセンサーの適用領域の広がり
CMOSセンサーの適用領域は、道路や鉄道、河川などの社会インフラの監視、産業分野での加工機械や検査装置などに広がっているほか、宇宙・天文や医療の分野でも注目が高まっている。東京大学木曽観測所のTomo-e Gozenプロジェクトでは、84台の超高感度35mmフルサイズCMOSセンサーを天体望遠鏡に組み込み、超新星爆発の観測などにも挑んでいる。(画像提供:東京大学木曽観測所)

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    培ってきた技術から生まれた3種類のCMOSセンサー

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