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キヤノンエコテクノパーク

「持続可能な社会」という大きな目標に向け、世界中の企業が取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)の実現。グローバル企業であるキヤノンも、世界中が抱える社会問題、特に環境にまつわる課題と向き合いながら事業を展開している。その最前線にいる人たちに話を聞いた。

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  • 2020.03.01

Episode.28 「資源循環型社会実現への取り組み」

「共生」という理念の下、育まれた企業文化

写真:古田清人 キヤノングループ全体の環境対応の方向性を検討するキヤノン(株)環境統括センターの古田清人

近年、SDGsという言葉を耳にする機会が増えている。「Sustainable Development Goals」の頭文字で、日本語にすると「持続可能な開発目標」である。2015年9月の国連サミットで採択された国際目標だ。SDGsが目指すのは「持続可能な社会の実現」という大きな目標で、貧困や飢餓、水質資源、気候変動、エネルギー、ビジネスなど、幅広い領域の17のゴール、169のターゲットで構成されている。ゴールの中には、働きがい、技術革新、人や国の不平等、生産者や消費者の責任など、経済活動と関係が深いものも含まれている。SDGsは、現代で事業を行うあらゆる企業に対して、解決に向けて取り組むべき社会課題を明確かつ具体的に提示したものでもあるのだ。

長くグローバル企業としてビジネスを展開してきたキヤノンは、特に環境に関する取り組みをいち早く進めてきた企業でもある。キヤノングループの環境対策を統括する古田清人は、これまでの歴史を振り返りながら話す。

「世界で環境問題がクローズアップされるようになったのは、1990年代からです。そのきっかけの一つが、92年にリオ・デ・ジャネイロの地球サミットで採択された『環境と開発に関するリオ宣言』です。そこから、世界中の人たちが環境問題という課題に目を向けるようになりました。キヤノンでは、90年に世界に先駆けて日米独でトナーカートリッジの回収をスタートさせ、そこから30年間、回収・リサイクル活動を続けてきました」

キヤノンはなぜ、いち早く環境に対する取り組みを進めたのだろうか。

「キヤノンは『共生』という理念を掲げています。この理念は、SDGsと同じ方向性の考え方です。全ての人類が末永く共に生き、共に働き、幸せに暮らしていける社会を目指し積極的に取り組んでいく。そうした考え方は、すでに90年以前からありました。だからこそ、環境への配慮にも積極的に取り組み、それが企業文化として根付いているのだと思います」

では、これまでどのような取り組みを進めてきたのだろうか。

メーカーとして向き合う資源の有効活用という課題

古田は、環境問題を突き詰めると大きく四つの領域に集約されると話す。一つ目は昨今話題になることも多い地球温暖化、すなわち気候変動の問題だ。二つ目は資源枯渇や廃棄物問題などの資源循環の課題。三つ目は人体や環境に影響を及ぼす可能性のある有害物質をどう取り除くかという問題。そして四つ目は生物多様性の保全だ。

「キヤノンはこの四つの領域それぞれに目を向け、取り組みを進めています。中でもメーカーという立場から考えた場合、どうすれば、限りある資源を有効活用し、使用する資源を最小限にしてモノをつくることができるのかを考え続けることが大切だと思っています」

一般的に製造業では、「品質(Quality)」「価格(Cost)」「納期(Delivery)」を示す「QCD」が製品の価値を決める要素だといわれる。一方、キヤノンではこれに「環境配慮(Environment)」を加え、環境保証活動を最優先する「EQCD」という思想の下で製品を社会へ送り出している。

「EQCDというコンセプトは、環境問題に対応しなければ、製品をつくる資格がないという考え方を表しています。より少ない資源で製品をつくり、サービスを提供しつつ、質の維持・向上をさせていくことで、限られた資源を有効活用することが必要です。研究開発の段階で何ができるのか、生産プロセスではどうか、お客さまの手元にどう届け、使用時はどうかなど、事業フェーズ全てにおいて何らかの形で環境問題が関わっています。そこでキヤノンでは、製品ライフサイクル全体を俯瞰して環境対応に取り組んできました」

それぞれのフェーズを連携させ、さらなる効率化を図り、ライフサイクル全体でCO2を削減することで、低炭素社会の実現に貢献することが必要だという。

また、環境問題での四つの領域に集約された課題の一つ、資源循環型社会の実現という観点で重要なのが、世に送り出した製品の回収・リサイクルだ。使い終わった製品やその素材を再利用することまで考え実践することは、製品のライフサイクルには欠かせない要素だ。

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    クローズドループリサイクルという理想を追い求めて
    「CARS-T」が実現した理想のリサイクルの形

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