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サステナビリティがもたらすインパクト

近年、「サステナビリティ」という言葉に注目が集まっている。企業経営においても、この地球規模のメガトレンドを理解し、戦略的に取り組まなければ生き残れない時代がやってきた。社会課題がビジネス課題に直結する今、社会と企業が共に持続的に発展していくにはどのような考えが必要なのか。サステナビリティの視点で取り組みを進める企業の例などからヒントを探る。

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  • 2021.06.01

サステナビリティがもたらすインパクト

ケーススタディ1
100年先まで見据え、全ての人が心から「安心」「喜び」を得られる仕組みを創る
LIFULL

1995年の創業以来、「利他」を経営の中心に据えて成長してきたLIFULL。同社が掲げる「公益志本主義」は、事業活動を通じた社会課題の解決が、自社も含めたあらゆるステークホルダーの「利」になるという、まさに現在のサステナビリティの考え方に基づいた経営モデルだ。中核事業である不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」以外にも、幅広い領域で「公益」の実現を目指す同社の取り組みに迫る。

ビジネスの本質的な喜びは「利他」にある

写真: 井上高志さん 井上高志(いのうえ たかし)
株式会社LIFULL
代表取締役社長

LIFULL(ライフル)の創業者、井上高志社長が経営の中核に「利他」を置くのは、不動産デベロッパーで住宅販売の営業を担当していた新人時代、ある若い夫婦の担当になったことがきっかけだ。

「お勧めした物件を気に入っていただけたのは良かったのですが、残念ながらローンの審査が通らなかった。何とかできないものかと思い、最終的には他社の物件を自分で探してご紹介したのです。当然、自社の売り上げにならないので、上司には叱られました。それでも、お客さまが本当に喜んでくださったのを見て、ビジネスの本質的な喜びとはこういうところにこそあるはずだと実感したのです」

自身の会社を立ち上げた背景にも、ユーザーに対する「利他」の想いがあった。

「賃貸であれ売買であれ、住まいとは多くの人にとって最も高額な支出。にもかかわらず、売る側と買う側の間に情報格差があり過ぎる。不動産のプロがお客さまよりも自社の利益を優先するケースも、当時は一部ありました。それを見て、この業界を変えなくてはと思ったのです」

不動産業界特有の「情報の非対称性」を解消すべく、紙媒体が主流の時代に物件情報ポータルサイトをスタート。ユーザーが無償で24時間、全国の不動産情報にアクセスできる環境を実現した。

「事業として黒字化するまでに6年かかりました。その間は、ホームページの制作やシステム開発の受注などで得た収益を、不動産ポータルに回していましたね。創業初年度から今に至るまで、赤字を出したのは計画赤字による投資を行った3年目のみです。渋沢栄一氏も『論語と算盤』でいっているように、利潤と道徳を高次元のレベルで両立させるのが、経営のあるべき姿。『利他』の部分を決して後回しにしないよう、自分自身にも言い聞かせながら、26年間続けてきました」

「八方よし」のバランスがサステナビリティの秘訣

公益志本主義をあらわした経営モデルの図 「公益志本主義」は、事業家・ベンチャーキャピタリストの原 丈人氏が提唱した「公益資本主義」がベースになっている

LIFULLの旗印である「公益志本主義」とは、あらゆるステークホルダーに対して同心円を描くように、等しく「利他」を追求する経営モデルだ(図)。

「よく『三方よし経営』といいますが、われわれの場合は『八方よし経営』。コンシューマー・クライアント・従業員・パートナー・株主・地球環境に、社会全体と自社も加えた計8つのステークホルダーの全てに配慮することで、経営の調和が保たれるという考え方です。この考え方に基づき、営業利益にも『四分法』のルールを適用。利益が出れば、まず国に税金として納め、残りは従業員に対する賞与、株主に対する配当、そして会社の内部留保に均等に分配します」

「公益志本主義」の同心円では、社是「利他主義」を中心に、その外側に『より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る』という、100年先を見据えた経営理念を設けている。さらにその外側に、理念を実行する行動規範としてのガイドラインを設定。これらを具体的な施策やプロジェクトへと落とし込むことによって、「事業を通じた社会課題解決」を実現しているのだ。

「2025年までに、世の中にあるさまざまな社会課題の解決に着手する」と井上社長が宣言するとおり、新たなプロジェクトも続々と登場している。

例えば、不動産ポータルの領域では「住宅弱者」の問題に注目。高齢者・外国籍・LGBTQ+・生活保護受給者といったバックグラウンドを持つ人々と、彼らに親身になってくれる不動産会社をつなぐ「ACTION FOR ALL」というプロジェクトを展開中だ。また、「アナログな不動産業界を改革する」という、創業当時からの課題にも引き続き挑んでいる。制度上これまで原則「対面」とされてきた「不動産契約時の重要事項説明のオンライン化」を、国土交通省との5年掛かりの交渉や実証実験を経て実現。内見から契約まで、全てがネットで完結できる時代に導いた。

自分たちの仕事の「意義」を考えるための場所が必要

これまでに手掛けていない領域の事業でも、「社会的なインパクトを生み出すことができ、経営理念やガイドラインと合致していて、なおかつ事業性がある」と判断すれば、積極的に進出している。従業員による新規事業提案制度「SWITCH」には、「子育てママの就労支援」「部活支援」「フラワーロス」など、あらゆるアイデアが、年間150件以上も集まってくる。

もともと高い志を持った人材が多いとはいえ、このように全社で社会課題に向けて取り組む環境を実現するには、「全社的なコミュニケーション」が不可欠だという。

「当社では毎月、全社総会を行っています。今はオンラインですが、何百人もの社員が一堂に会し、なぜビジョンが必要なのかを、私や役員から伝えています。また、全社の取り組みとして、会社の存在意義とは何か、働くとはどういうことかといった根源的なテーマを年4回程度、ディスカッションする場も設けています。さらに、経営理念実現のために自分たちが具体的にどういった行動ができるのかを考えるための取り組みも行っています。自分たちの仕事が社会を良くすることにつながっていると実感することは、社員のモチベーションに直結すると考えているからです」

これからもLIFULLは、多くの人を巻き込みながら、あらゆる人が幸せになれるムーブメントをつくっていく。

画像:CLEAN FOODとLIFULL FLOWERの画像

新規事業提案制度「SWITCH」からは、規格外野菜や余剰野菜をスムージーに利用してフードロスの解決を目指す「CLEAN FOOD」、花の廃棄ゼロを目指して花農家と消費者を直接つなぐサブスクリプションサービス「LIFULL FLOWER」などが事業化されている

画像:ACTION FOR ALLのロゴと「FRIENDLY DOOR」のステッカー

あらゆる人の"したい暮らし"を実現する「ACTION FOR ALL」は、国籍、年齢、性別などさまざまなバックグラウンドを持つ住宅弱者と、相談に応じてくれる不動産会社をつなぐプロジェクト。Webサイトの「FRIENDLY DOOR」から探せるほか、プロジェクトに参加する不動産会社に「FRIENDLY DOOR」のステッカーを配布し、目印にしてもらう

動画:LIFULL VISION 2025「あらゆるLIFEを、FULLに。」

https://www.youtube.com/watch?v=RGMsl0_5Ea8

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    長期的視点と存在意義の再定義で
    サステナビリティ経営を実現
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    リアルの強みと共創事業で"誰一人取り残さない"
    「ヤマトホールディングス」

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