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トップ > 特集 「売れない時代」の処方箋 “買う”と決める、そのココロ > ケーススタディー1
人が商品やサービスを「買いたい!」と思うとき、そこにはどのようなメカニズムが働いているのだろうか。 売り手はどのようにしてそれに働き掛けていけばいいのだろうか。「モノが売れない」といわれるこの時代に人々の購買意欲を促す方法を探る!
トイレットペーパーから高級ブランドまでを取りそろえた圧倒的な商品ラインアップ。天井まで商品を隙間なく積み上げた「圧縮陳列」。迷路のように入り組んだ通路。目を引く手書きのPOP──。数ある小売店の中で、ドン・キホーテほど個性が際立つ店はない。
海外にも展開しているドン・キホーテグループ約350店舗に共通するコンセプトは「便利さ」「安さ」「楽しさ」だ。「必要な物を必要な時に買う」だけではなく、ワクワク・ドキドキしながら「宝探しのように買い物を楽しんでいただきたい」とドンキホーテホールディングスの広報担当者は言う。
欲しい商品を探す時、その探索の過程自体が楽しく、またその過程で別の商品との出合いなど新しい発見がある。そうして顧客のエモーションを刺激することで、滞在時間・回遊時間を延ばし、客単価を上げていくのが独自の戦略だ。
しかし意外にも、その「楽しさ」の演出に特定のルールはないのだという。
「当社では、現場への権限委譲を徹底しています。品ぞろえ、価格、陳列方法などは、基本的に全て現場のスタッフが決めています」
売り上げが伸びない商品があれば、現場判断で配置や価格を変える。近隣競合店で販売している商品の取り扱いがないと分かれば、現場スタッフが直接メーカーや卸業者に連絡してすぐに仕入れる。その柔軟性によって、「楽しさ」を保ち、日々変化する消費者心理に対応している。
移ろいゆく消費者心理を捉える最良の方法は「観察」だ。店舗内だけでなく、店舗周辺の環境や人の行動を日常的に観察し、店舗づくりに生かしている。顧客の「心」の変化を現場スタッフの「心」が捉える。いわば人をもって人を知る。その仕組みこそが、ドン・キホーテの最大の個性だと言っていい。
1号店が開店したのは1989年。以来27期連続で増収増益を達成している。その快進撃を支えているのが、顧客の「心」を捉え続ける現場の人間力なのである。