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ITのチカラ Vol.22 業務効率化と生産性向上のために「EDI」でデジタル変革

企業間の受発注は、電話やファクスを使う企業は少なくない。そこでは納品日の誤認や業務効率の低下が生じうる。この課題を解決するのがEDI(電子データ交換)だ。EDIの利活用を促す流れがある一方、導入企業では、ISDN(INSネット ディジタル通信モード)サービス終了で旧来のEDIの換装が求められている。EDIの利活用で企業はどんなメリットがあるのか。明治大学 経営学部 教授の岡田浩一さんに聞いた。

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  • 2021.12.01

[Vol.22]業務効率化と生産性向上のために「EDI」でデジタル変革

EDIの導入は伸び悩み「2024年問題」という新たな課題も浮上している

写真:岡田浩一 さん 「日本のEC化にはまだまだ伸びしろがある。大企業には旗振り役となってEDIの導入と利活用を進めてほしい。」 明治大学
経営学部 教授
岡田浩一 さん
明治大学経営学部経営学科卒業後、2001年より現職。日本中小企業学会理事、経済産業省「IT経営力大賞」選考作業部会長、クラウドサービス推進機構理事、経済産業省「攻めのIT経営中小企業百選」選定委員長などを歴任。

――これまでEDIが思うように普及してこなかったのはなぜでしょうか。

EDIは決して新しく世に出てきた技術ではなく、すでに1970年代から導入されてきたものです。EDIとは簡単にいえば、商品の受発注をはじめ取引に関する内容を相手方とデータでやりとりする仕組みです。電話やファクスを使った受発注と異なり「言った、言わない」のトラブルを避けたり、数量や納品日を聞き間違えたりといったケアレスミスを大幅に減らし、取引の正確性を高めることができます。

しかし近年になるまで、そういったEDIの価値があまり注目されず、企業規模による違いはありますが、導入率もそれほど伸びませんでした。業界ごと、あるいは系列ごとに独自の仕様を持ったEDIが乱立しており、多くの企業から受注を受ける企業は複数のシステムに対応するための投資や運用を余儀なくされたことも一因にあると考えています。

これを裏付けるように、日本のBtoB市場におけるEC(電子商取引)化率も伸び悩んでおり、2015年の約27%から5年が経過した19年になっても約31%にしか達していません。

さらに、すでにEDIを導入している企業の間にも「2024年問題」と呼ばれる新たな課題が浮上しています。NTT東西は24年1月にISDN(INSネット ディジタル)サービスを終了し、順次IP網へ移行することを発表しています。これまでISDNを利用してきたレガシーなEDIシステムは使えなくなることになります。

通信速度の速い光回線が普及する一方で、老朽化したISDNの設備は限界を迎えており、より高速に送受信できるIP網に対応した形でのEDIシステムの構築が急務となっています。

入金消込業務に月平均で5時間以上をかける企業が全体の半数以上を占める

――EDIの利活用が遅れていることで、どんな弊害が起こっていますか。

業務の効率化を進めることができないのが最大の問題です。

象徴的な例として、中小企業が取引先に対してどんな手段を使って送金しているのかを調査した結果によると、半数の企業が銀行窓口やATMから振り込みを行っていると回答しました。

また、中小企業の入金消込業務にかけている時間の調査では、月平均で5時間以上と答えた企業の割合が半数以上を占めており、さらに入金消込業務に月5時間以上かけている企業の内訳を見てみると、20~50時間かかっていると回答した企業が最も多いことが明らかになりました。

多くの時間と手間を削減するためにも、EDIによって受発注などの取引をデータ化し、さらに会計システムや全銀EDIシステム(ZEDI)と連携させれば、目視と手作業で行っている煩雑な経理処理を解消し、もっと業務を効率化できるはずです。

  • EDIとは

    Electronic Data Interchange(電子データ交換)の略 標準プロトコルに基づいて、発注書や納品書、請求書といったビジネス文書をネットワーク経由で電子的に交換する 従来はEDIを実施する企業間で独自にフォーマットを決めて運用することが多かった 取引業務の効率化が期待できる
  • レガシーEDIとは

    電話回線を使用したEDIのこと INSネット ディジタル通信モードの2024年提供終了に伴い、23年から通信遅延の可能性がある

電子商取引の現状とEDIの2024年問題

画像:電子商取引の現状とEDIの2024年問題
  • ① 日本におけるBtoBの市場規模とEC(電子商取引)化率

    日本におけるBtoBのEC市場規模は2015年の287兆2250億円から2019年には352兆9620億円に拡大。それにともないEC化率も伸びており、今後も成長が見込まれる。(※1)
  • ② 電子商取引による効果

    EDIなどの電子商取引を導入することで、さまざまな項目で効果が期待できる。とりわけ、コスト削減、業務プロセス合理化・意思決定の迅速化、企業間連携の促進では約3割の企業が効果ありと回答している。(※2)
  • ③ 業種別のITツールごとの利活用状況

    EDIは業務の効率化などで大きな役割を果たす。しかし、企業規模により違いはあるものの、業界別のEDI導入率は最も高くて卸売業の27.1%であり、全体で見ても、導入率が高いとはいえないのが現状である。(※3)
  • ④ NTT東西によるIP網移行スケジュール

    NTT東西は、加入契約数の減少や中継交換機・信号交換機などインフラの維持が限界に近いことなどを理由に、「INSネット ディジタル通信モード」を2024年1月で終了する。取引先との調整のタイミングなども鑑みると、早期の対策が必要になる。(※4)
  • ※1 経済産業省/「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」より作成
  • ※2 中小企業庁/「中小企業白書2016」より作成
  • ※3 公益財団法人全国中小企業取引振興協会/「規模別・業種別の中小企業の経営課題に関する調査」より作成
  • ※4 NTT東日本、NTT西日本/「固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて」より作成

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    IT利活用のネックとなっている
    現場の従業員の意識から変えていくことが急務
    企業単位でIT人材を確保するのは困難な時代、外部の人材を活用せよ
    大企業はリーダーシップを発揮し、
    取引先と共にEDIの導入・利活用の推進を

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