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ITのチカラ Vol.22 業務効率化と生産性向上のために「EDI」でデジタル変革

企業間の受発注は、電話やファクスを使う企業は少なくない。そこでは納品日の誤認や業務効率の低下が生じうる。この課題を解決するのがEDI(電子データ交換)だ。EDIの利活用を促す流れがある一方、導入企業では、ISDN(INSネット ディジタル通信モード)サービス終了で旧来のEDIの換装が求められている。EDIの利活用で企業はどんなメリットがあるのか。明治大学 経営学部 教授の岡田浩一さんに聞いた。

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  • 2021.12.01

[Vol.22]業務効率化と生産性向上のために「EDI」でデジタル変革

IT利活用のネックとなっている現場の従業員の意識から変えていくことが急務

――EDIもさることながら、IT自体の利活用が遅れているように思えます。

まさにその通りです。EDIは業務効率化の切り札となり、そういった意味で日本企業は大きな"伸びしろ"を持っているともいえますが、その前段階におけるITの利活用で立ち遅れています。

これは今に始まったものではなく、かれこれ20年来にわたって叫ばれ続けている問題ですが、諸外国と比べて日本企業におけるIT利活用は後塵を拝しているのが実情です。

ではなぜIT利活用が進まないのでしょうか。当初は経営者が後ろ向きであることが大きな原因だと考えられていました。実際に高齢の経営者の中にはITに対して苦手意識を持っている人は少なくありませんが、問題はそれだけではないことが分かってきました。

昨年、東京商工会議所が行ったアンケート調査によると、「ITは重要」と考えている経営者は年齢と関係なく、予想以上に高い比率を占めています。むしろネックとなっていたのは、実は従業員の方だったのです。従業員全体の平均年齢が高いとITに対するネガティブな意識が高くなるという相関関係があることが明らかになりました。従来の業務の進め方に慣れている年配の従業員がやり方を変えることに不安を感じて、ITの導入に拒否反応を示すのです。まずはこうした現場の意識から変えていく必要があります。

企業単位でIT人材を確保するのは困難な時代、外部の人材を活用せよ

――どうすれば現場の意識を変えて、IT、EDIの導入を促せますか。

もし可能であるならば、社内にIT人材を確保することが理想的です。ITについて詳しい知見を持った人が一人でもいれば、EDI導入についてもリーダーシップを発揮するとともに、業務上のメリットを社内に啓蒙し、現場の従業員の意識を変えることができるでしょう。

ただし、そうしたIT人材は今やどんな業界でも引く手あまたの存在となっており、経験者の採用は容易なことではありません。仮に今いる従業員の中から育成できたとしても、今度は逆にヘッドハンティングなどで他社に奪われてしまう可能性もあります。

近い将来、各企業単位でIT人材を必要な数だけ維持し続けることは、不可能となるかもしれません。

そうした意味でもますます重要になってくるのが、外部にいるIT人材の活用です。具体的には高度な技術力やノウハウを持ったITベンダーとパートナーシップを結び、自社に足りないIT人材を補ってもらうのです。

大企業はリーダーシップを発揮し、取引先と共にEDIの導入・利活用の推進を

――EDIをあらゆる企業に広げていくためにどんなことが必要ですか。

先ほど、各業界などの独自の仕様を持ったEDIが乱立していたと述べましたが、現在ではそうした既存の枠を超えて、あらゆる企業が利用できる「共通EDI」の仕様も策定され、実業務への導入も進んでいます。

優れたITベンダーとしっかり手を組めば、こうした新しいEDIの基盤もスムーズに導入することができます。このように今後は外部の優れたIT人材を社会的な共有財産として捉え、積極的に活用していくことが肝要です。

また、当然のことながらEDIは自社だけで完結するものではありません。中小企業を含めた全ての取引先の協力を得て成り立つものであり、それによってはじめて業務効率化と生産性向上につなげることができます。そういった意味でも大手企業には、全ての取引先と一緒になってデジタル変革を起こしていくという気概を持ち、サプライチェーン全体へEDIの導入と利活用を広げる取り組みにリーダーシップを発揮してほしいと思います。

実際にある大手メーカーは、従来から運用してきた流通業界向けEDI(流通BMS)の恩恵を享受できずにいた中小企業や、流通業に属していない取引先に対して共通EDIを提案し、導入や利活用をサポートしました。

これにより電話やファクスによる受発注のやりとりを激減させることに成功し、このメーカーも取引先も、業務処理の手間やコストを大幅に抑えられ、Win-Winの成果を上げています。

今後はITベンダーや取引先の協力を得ながらEDIを導入・利活用することで、企業の生産性を高め日本全体の経済を活性化することができます。その効果は結果的に必ず自社にも還元されるはずです。

岡田氏の注目POINT

  • 2024年1月のISDNサービス終了までにIP網に対応したEDI再構築が急務
  • 外部の優れたIT人材を社会的な共有財産として積極的に活用していくことが肝要
  • 全ての取引先と一緒になってデジタル変革を起こしていくという気概で推進することが重要

キヤノンITSの「EDIソリューション」

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