カテゴリーを選択
トップ > ITのチカラ [Vol.24] 深刻なドライバー不足の危機を脱する「ホワイト物流」実現のための道標 > P2
トラック輸送を担うドライバーの高齢化が進行し、若手への世代交代もほとんど進んでいない。需要の急拡大によりドライバー不足が深刻化している。こうした物流業界の課題に対し、ドライバーの負担軽減とともに輸送業務の効率化と生産性向上を実現すべく、国土交通省が主体となって推進しているのが「ホワイト物流」と呼ばれる取り組みだ。いかにしてこの構想の目標を達成することができるのか、流通経済大学 流通情報学部 教授の矢野裕児さんに聞いた。
今回のポイント
ソリューションレポート
――物流プロセスを標準化すれば、輸送業務はどのように変わりますか。
物流プロセスの標準化が進めばデジタルツールの活用も可能になり、発荷主と着荷主、輸送業者は互いに情報を共有し、連携可能になります。
標準化とデジタル化により、発荷主がいつ頃、どんな荷物を、どこに向けて発送しようとしているのか。また着荷主がその荷物をいつ受け取ることを望んでいるのかなどの情報が事前に伝われば、輸送業者は常に先を読みながら車両やドライバーの手配を行い、業務を効率化できます。
着荷主としても、いつ、どの取引先が手配したトラックが到着するのか事前に分かれば、荷受けなどの作業を計画的に行えるようになります。
物流プロセスの標準化という土台が整うことで、さまざまなデジタルツールを活用することが可能となり、その恩恵を最大限に享受することができる。「出たとこ勝負」のロジスティクスから脱却することができれば、ホワイト物流の実現も見えてくるのです。
――物流業界ではどんなデジタルツールの活用が期待されますか。
発荷主と着荷主、輸送業者の3者が情報を共有するための基盤となるのはEDIですが、さらにデジタルならではの大きな効果を得るという意味で、需要予測ソリューションの活用も期待されます。
「出たとこ勝負のロジスティクスからの脱却」「常に先を読んだ対応」について触れましたが、まさにそれを支えるのが、いつどこで何が必要とされるかを予測する「需要予測」なのです。発荷主と着荷主、輸送業者の3者が情報を共有すればするほど、その精度を高めることができます。
他にも、渋滞や工事を避けた走行ルートをリアルタイムに算出することで、予定どおりのスケジュールでトラック輸送を行えるようになる配車管理や配送ルートの最適化にも、デジタルツールは活用できます。
個人的に関心を持っているのが、多くの企業で導入が進んでいる入出庫バース(積み降ろしスペース)の予約システムと配車管理システムとの連携です。現在、せっかく朝一番に荷物を届けたのにもかかわらず、入出庫バースが混み合い、結局荷受けまでに数時間も待たされるといった問題があちこちの現場で散見されます。各社の入出庫バース予約システムと連動した配車管理が可能になれば、この課題は解決へ向かうでしょう。
ホワイト物流は見方を変えれば社会全体の最適化に資する取り組みであり、課題は山積していますが、そのぶん大きなのびしろもあります。発荷主や着荷主、輸送業者といった物流に携わる事業者だけでなく、一般消費者も含めて物流に対する従来の考え方や行動を変え、デジタルを活用することで、多くの課題が解消すると考えています。