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トップ > ITのチカラ [Vol.8] 車載ソフトウエア開発サービス > P1
自動車向けソフトウエアプラットフォームの開発を行うAPTJ社に参画し、車載ソフトウエア開発事業を加速するキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)。これまでの取り組みと今後の方針を、キヤノンITS インダストリーシステム事業本部の橋本真幸、雨宮佑樹、APTJ 開発部の川村和義、品質保証部の佐藤友紀が解説する。
今回のポイント
インタビュー
―― 近年、自動運転技術や安全技術といった自動車の新たな分野に注目が集まっています。自動車の電子化、IT化の進展について教えてください。
橋本
自動車の電子化は、もともとはアメリカで排ガス規制への対応としてエンジンの電子制御が採用されたのを契機に始まりました。最近は2020〜30年をめどに完全自動運転を実現するため、業界各社が「安全」や「高機能」を追求したIT化を加速させています。
川村
自動車は、すでにセンサーや電子制御ユニットを使って走るエレクトロニクス技術の固まりになっています。走る・曲がる・止まるといった基本的な機能はもちろん、ハンドルを切ったとき、ブレーキを踏んだときなどのフィーリングもソフトウエアで調整されています。
佐藤
事故を起こしにくくし、万一の場合には被害の軽減を図る「安全」機能、ハイブリッド車やアイドリングストップに代表される「環境」機能、カーナビゲーションによる「情報端末」機能などの高度な機能を実現するため、組込みシステムが使われています。現在の高級車で使われるソースコード(※)は、次世代中型旅客機の1.3倍ともいわれるほど、自動車の高度化が進んでいるのです。
川村
運転の自動化や先進的な安全性能の実現のため、かつての車載ソフトウエア業界にはなかった通信技術や画像処理技術の知見が求められているのも近年の特徴といえるでしょう。
―― 自動車の電子化、IT化の進展に伴う課題はどのような点にありますか。
橋本
ソフトウエアを開発する技術者の確保や開発の効率化、コストダウンが喫緊の課題だといえます。そのために必要性が高まっているのが、ソフトウエアの「共通プラットフォーム」です。
例えば昔の携帯電話は、各メーカーが機種ごとに全てのソフトウエアを独自に開発していたことで、その規模は膨れ上がりました。しかし現在のほとんどのスマートフォンでは、共通利用できる「OS」として、アンドロイドやiOSが搭載されています。それによってその上で動くアプリケーションの開発が容易になり、開発期間の短縮やコスト削減が可能になっています。自動車業界でも同様の動きがあります。車種ごとに開発してきたことで爆発的に規模が大きくなったソフトウエアのうち、共通で使用できる部分をプラットフォームとして再利用できるようにするという流れです。
川村
そうした車載制御システムのプラットフォームとして「AUTOSAR」という仕様の普及が欧州メーカー主導で進められています。グローバルな業界標準になりつつある「AUTOSAR」の仕様に基づいたプラットフォームを利用すれば、さまざまな機能やソフトウエアを共通のインターフェースで開発できますから、開発の効率化やコストダウンの効果が大きいのです。キヤノンITSは、名古屋大学発ベンチャー企業として「AUTOSAR」仕様をベースとしたソフトウエアプラットフォームを開発するAPTJ社に参画し、日本での「AUTOSAR」関連の事業を進めていきます。
※コンピュータープログラムとしてプログラミング言語で書かれた文字列
自動車をはじめ、オフィス機器やコンシューマー機器、産業機器や医療機器といった多岐にわたる製品のソフトウエア開発など、幅広い組込みソリューションを提供します。