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ITのチカラ Vol.10 教育の「質的向上」に集中できる環境づくり

経済や情報のグローバル化、少子高齢社会の到来などにより、これからの社会を担う人材をどのように育てていくかが問われている。そのような中、教職員が教育に集中できる環境づくりや時代に合った新しい教育スタイルの確立・普及など、ITが果たすべき役割は大きい。教育の質的向上のために解決すべき課題や、期待される取り組みはどういったものなのか、東京学芸大学の高橋純さんに話を聞いた。

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  • ITのチカラ
  • 2018.09.01

[Vol.10] 教育の「質的向上」に集中できる環境づくり

生徒が一人一台のコンピューターを使える環境で教育が変わる

――日本は教育用コンピューターの一人当たりの整備率が低く、小・中学校ではソフトウエアの購入予算が減少傾向にあるといったデータもあります。

教員のコンピューター普及率が100%を超えてから、まだ5、6年程度です。生徒に一人一台のコンピューターが普及するのはこれからでしょう。

ICT環境整備経費が地方交付税措置されたとはいっても、地方交付税の使途は国が制限したり条件を付けたりすることはできません。ですから、実際に予算措置する各地方団体において、学校のIT環境整備の重要性について認識を高める必要があります。そのためには、実際に教育の場でコンピューターがどう使われるのか、具体的なイメージを共有することも大切です。

例えば東京都渋谷区では2017年、区立の小・中学校で生徒、教師に一人一台のタブレットを配備し、自宅への持ち帰りも可能としました。これは、タブレット端末や学習ソフトなどを使い、「いつでも」「どこでも」学習できる環境を整えること、情報活用能力を身に付けて「知識を使える」人材を育成していくというのが目的です。

しかしながら、タブレットを導入したからといって、生徒の学力がすぐに向上するわけではありません。これは、会社に新たにコンピューターを入れてもすぐ利益が倍増するわけではないのと同じです。ですが、今や会社でコンピューターを使わずに仕事をすることなど考えられないのと同様、渋谷区では生徒にとってタブレットは学習に欠かせない道具になっています。

これまで、学校へのコンピューターの配備は「コンピューター室に40台設置されていて、全校生徒がそれを共用する」といったスタイルが主流でした。しかし、そのようなスタイルでは、生徒が自由に「いつでも」「どこでも」ITを利用できる環境には程遠いといわざるを得ないでしょう。

大学ではIT環境の整備でアクティブ・ラーニングが進みつつある

――IT環境の整備によって、教育は具体的にどう変化していくでしょうか。

主体的に問題解決に取り組むようなアクティブ・ラーニングが活発になるでしょう。例えば大学では、無線LANが整備され、学生全員がパソコンやタブレットを持って、いつでも必要な調べものができる環境になっているところもあります。加えて、机や椅子が可動式になり、プロジェクターを使って簡単に資料などの投影ができると、講義では自然に学生たちが向かい合って座り、相互に議論する形式が増えていきます。教員が一方的に話すだけの講義とはまったく異なる面白い授業が展開され、学生はより主体的に学ぶようになるでしょう。学生と一緒に考える講義であれば教員の準備の質も変わり、より本質的な議論に時間を割けるようにもなるはずです。

こうした動きは大学で先行していますが、今後、新学習指導要領に移行すれば小・中学校にも広がるでしょう。従来の授業とは「教え方」も変わることになるので、教員が指導方法を学ぶ時間も必要です。このような流れを考えても、IT化による教員の業務負担軽減を迅速に進める必要があると思います。

高橋氏によるまとめ

  • 教育環境の改善のためには、まずデータを収集・分析して状況の「見える化」が必要
  • 校務システムの導入・改善などによる、ITを活用した教員の業務負担軽減が必須
  • 生徒1人1台のコンピューター配備などIT環境の整備によって、教育の内容も進化する

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    教育現場改善のためには
    データの収集と分析による「見える化」が不可欠
    新学習指導要領では「ICT環境整備」のために
    予算措置も行われている
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