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トップ > ITのチカラ [Vol.12] ITの活用で「地域金融」はどう変わるのか > P2
少子高齢化、都心部への人口集中が進む中、地域金融機関の役割が変わり始めている。地元企業が廃業するケースが増えて法人への貸し出しが減少傾向にある一方、個人の資産運用ニーズの高まりへの対応が求められている。こうした経営環境の変化に対応するための体制づくりとITの活用について、マリブジャパンの高橋克英さんに話を聞いた。
今回のポイント
ソリューションレポート
――少子高齢化、人口流出が進む地方において、優秀な人材確保のための方策はありますか。
地域経済全体の活性化、地域金融機関の経営効率化と新たなニーズへの対応ということに広く目を向けるなら、金融機関は意識的に人材の流動化を進める必要があると考えています。
個人の資産運用アドバイスや金融商品販売に注力するのであれば、専門知識を持つ人を育成するだけでなく、スペシャリストを中途で採用することも視野に入れる必要があるでしょう。またコンプライアンス対応やそれに伴う事務負担の軽減などを行うためには、ITの活用が欠かせず、そうした仕組みをつくって運用するための人材の確保も求められます。
一方で、地域金融機関には人材を集めるだけでなく、優れた人材を地域全体へ供給するという意識も必要ではないでしょうか。金融機関で経験を積んだ「企業経営の数字が分かる人材」が地元企業に転職し、経営に参画していくような動きが活発化すれば、地域経済を支えることにつながるはずです。
地方の転職市場を活性化して人材の流動性を高めながら、地域金融機関が地元の経済規模に応じて適切にスリム化を進めていくことができれば、理想的な対策といえるでしょう。
――IT化が欠かせないという点に関連して、地域金融機関の課題解決のためのIT活用のポイントを教えてください。
まず必要となるのは、コンプライアンス対応やバックオフィス業務を効率化するためのIT活用です。
特にコンプライアンス対応のように高い正確性や確実性が求められる業務、担い手にストレスがかかりやすい業務は、IT化をどんどん推し進めるべきでしょう。地域金融機関にとっては、iDeCo、NISAのような新しい制度の登場でシステム対応に掛かる初期コストが大きくなるという課題もありますが、クラウドソリューションの普及により低コストで導入できるシステムも増えていますから、適切なソリューションを選択すれば、IT化は地域金融機関のコスト低減に寄与します。
より長期的な観点では、現在は店頭で対面で提供しているサービスの多くはスマートフォンのアプリで行えるようになるでしょう。それに合わせて店舗網をスリム化すれば、企業としての経営も筋肉質になっていくことが期待できます。店舗網の縮小によって人材に余裕が生まれれば、個人向けの資産運用コンサルティングなど、対面での対応を必要とする業務により注力できるようになるでしょう。
サービスだけでなく、紙の書類を必要としている事務作業もスマートフォンやタブレット端末で処理するのが当たり前になるはずです。業務効率化という観点から、地域金融機関はそういったITソリューションを積極的に導入すべきだと思います。事務作業の負担はITを活用して軽減し、「人間でなければ対応できない、顧客に寄り添う仕事」に人材を集中できる体制をいかにつくっていくかが、これからの地域金融機関の活路になるでしょう。