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ITのチカラ Vol.13 模倣品被害の実態とIT活用による対策の必要性

近年、サプライチェーンのグローバル化やECの普及による物流網の複雑化、スマートフォン向けフリマアプリなどによるCtoC市場の拡大などを背景に、「模倣品」によるさまざまな被害が拡大している。その実態や、企業が取り組むべき効果的な対策、ITソリューションが果たす役割について、デロイト トーマツ コンサルティングの羽生田慶介さんに話を聞いた。

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  • 2019.06.01

[Vol.13] 模倣品被害の実態とIT活用による対策の必要性

技術は保護してもブランドを守る意識が低い企業はまだ多い

企業の被害としては、ブランドの毀損にも、より注意を向けるべきでしょう。中国など新興国企業の技術力は、急速に向上しています。技術力での勝負が厳しさを増す中、日本企業が長い時間をかけて培ってきたブランドは、短期間では得ることができない価値を生み出しています。そのブランドを保護することは、競争力の維持には必須の取り組みだといえます。

ところが、日本企業の多くは、ブランド保護の意識があまり高くありません。海外での知的財産の侵害に対する裁判の件数を見ると、日本は特許権の侵害には多くの裁判を起こす一方、商標権の侵害に対してはあまり裁判を起こしません。これは他の先進国には見られない傾向で、「技術は守るが、ブランドは守らない」のが日本企業の現状といえます。

「日本企業は商標権については訴訟による損害賠償を重視しておらず、和解を優先している」ともいわれますが、商標権侵害は、企業が訴訟を起こさなければ行政当局も行動を起こせません。日本企業の対応が、模倣品業者や被害を増やしている可能性もあるのです。日本企業はブランドを守るために、より積極的な行動が必要ではないでしょうか。

また、日本企業は、模倣品が存在していることの公表を避ける傾向があります。しかし、模倣品の存在を公にしなければ、消費者は注意することもできません。消費者保護という観点から、企業は被害を公表した上で、対策に注力している姿勢を示していくべきでしょう。

規模の小さな企業では、模倣品の被害が発生しているかどうかを把握するのが難しい場合も多いでしょうから、業界団体などを通じた取り組みも求められるでしょう。

人手で取り締まるには限界、ITソリューションによる模倣品対策に期待

――今後、どのような姿勢で模倣品問題に向き合い、対策を行っていけばよいのでしょうか。

まず考えられるのは、税関などでの取り締まりの強化ですが、輸入量が増加していることもあり、人間が対応するオペレーションではいくら強化しても限界があります。

新興国の中には、商標登録制度や商標権を保護する法律がない国もあり、サプライチェーンのグローバル化の中で、そのような国が模倣品の温床になる可能性がありますから、二国間や多国間での地道なルールメーキングは今後も進めていく必要があるでしょう。

サプライチェーンや物流網の複雑化や、消費者の購買行動の多様化は今後も進みますし、法整備を進めても模倣品を根絶することは困難ですから、ITソリューションを活用した対策も不可欠でしょう。例えば、画像認識技術やAI、クラウドの活用は、模倣品の検知や正規品との照合の領域で効果が期待できます。正規品の販売ルートや模倣品検知の情報を蓄積・分析することで、今後のより効果的な施策につなげることもできるでしょう。

ITを活用した模倣品対策を導入していく際には、業界団体を通じた企業間の連携も必要になるでしょう。正規品を証明する方法や確認の手段は、標準化されていた方が信頼性は高まります。業界全体で標準化されたシステムを構築すれば、模倣品対策によるコスト上昇も最小限に抑えることができるのではないでしょうか。

羽生田氏によるまとめ

  • 中国など新興国の技術レベル向上により、模倣品被害が多様化・深刻化している
  • 日本企業は模倣品によるブランド毀損に対する意識を高め、取り組みを強化すべき
  • 税関での取り締まり強化など人手による対策には限界あり。ITソリューションの活用が不可欠に

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