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トップ > ITのチカラ [Vol.14] 日本のものづくりはIoTでどう変わるのか > P1
「インダストリー4.0(第四次産業革命)」が起きているともいわれ、IoT活用への注目度が高まる中、日本がこれまで強みを発揮してきたものづくりを取り巻く環境は大きく変化しつつある。新たな環境において日本企業が直面している課題やその解決策、IoTやデータ活用で先行する海外企業との戦い方について、東京大学の越塚 登さんに聞いた。
今回のポイント
ソリューションレポート
――日本のものづくりについて、どのような課題があると見ていますか。
日本企業はこれまで、高品質なものづくりを強みとしてきました。細部まで磨き上げる高い技能、事故を起こさないことへの強いこだわりがあります。日本は「品質管理の国」だということもできるでしょう。
しかし近年はものとサービスが一体となり、ものは「サービスを売るための手段」になりつつあります。ものづくりも品質を追うだけでなく、サービスから考えることが求められており、企業は「どのような顧客に、どんな価値を提供するのか」から考える必要があるのです。そしてこの点で、日本企業はGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に象徴される、アメリカのIT企業の後塵を拝しているのが現状ではないでしょうか。
例えば眼鏡を製造・販売する場合、日本では「壊れにくく長持ちするものを作ろう」と考えることが多いのではないかと思います。しかし眼鏡を「視力を矯正するサービス提供の手段」だとみれば、サービスが常に提供されていればよいとも考えられます。それならば壊れにくさよりも、壊れたら1時間以内に新しい眼鏡が届く発注や物流のシステムを提供する。そんなアプローチもあるでしょう。
極論してしまえば、「壊れにくい」といったもののクオリティーを重視する日本企業に対し、世界は「すぐに手元に届く」などのサービスを重視し、届かなければそれによる損失を賠償すればよいという考え方で動いているわけです。
品質管理については、「最悪値を抑える」「平均値を上げる」という二つのアプローチがあります。日本は最悪値を抑えることに価値を見いだす傾向がある一方、欧米は平均値を上げるアプローチを取っているといえるでしょう。ミスが起きることが前提となっており、「ミスが起きたときにどう対処するか」をあらかじめ決めておくことで、深刻な事故でない限りはミスを許容する文化があるともいえます。
二つを比べると、トータルでは「平均値を上げる」方がサービスのレベルは高まります。命に関わる製品や品質を磨き上げることで価値が生まれる分野では、品質の高さは強みであり続けますが、今後の世界的な主流ではなくなっていくでしょう。
最悪値を抑えることにこだわる日本流の考え方が、本当に求められている価値について見極めることを難しくし、サービス全体の平均値を上げることを阻害している面もあると思います。
――「インダストリー4.0」による環境変化について教えてください。
インダストリー4.0を分かりやすくいえば、国全体を一つの工場にするイメージです。すでに一つの工場でものを作る時代ではありません。例えば、スマートフォンは、部品や組み立て機械は日本や韓国で作られ、それらを中国に集めて製造されています。一つの工場の中でベルトコンベヤーに載った部品が組み立てられてものづくりが進むのではなく、道路がベルトコンベヤーの役割を担い、部品を輸送しながらものが組み上がっていくわけです。こうしたワールドワイドなものづくりでは、工場単体ではなく国や世界全体で製造することが必要です。
繰り返しになりますが、サービス提供の手段としてのものづくりが求められる現在、物流なども含めたサービスレベルの向上やクオリティー・コントロールを、「点」ではなく「面」で模索していく必要があります。また、工場づくりも都市設計から考えなければなりません。例えるなら、ものづくりはもはや「総合格闘技」の様相を呈しているといえます。この点、あらゆるものをインターネットにつなげるIoT(モノのインターネット)は、この総合格闘技で戦うための技術でもあるのです。IoTによる「つながることで生まれる価値」を活用し、「面」で戦うことを意識する必要があります。
第四次産業革命やIoTと日本企業の現状
① 世界のIoTデバイス数の推移および予測
② IoTに係る製品開発やサービス提供の取組状況
③ ICTの生産性上昇効果
④ 日米企業のイノベーションの実現度
⑤ Industry4.0の訪れ
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