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ITのチカラ Vol.14 日本のものづくりはIoTでどう変わるのか

「インダストリー4.0(第四次産業革命)」が起きているともいわれ、IoT活用への注目度が高まる中、日本がこれまで強みを発揮してきたものづくりを取り巻く環境は大きく変化しつつある。新たな環境において日本企業が直面している課題やその解決策、IoTやデータ活用で先行する海外企業との戦い方について、東京大学の越塚 登さんに聞いた。

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  • 2019.09.01

[Vol.14] 日本のものづくりはIoTでどう変わるのか

国全体で都市設計、社会制度設計に取り組むことが必要

――課題解決のために取り組むべきことは何でしょうか。

国全体での都市設計はもちろん、法律などの社会制度の見直しにも取り組む必要があるでしょう。

例えば、IoT家電において日本は出遅れているのが現状です。技術はあるのにメーカーが積極的に取り組まない理由の一つは、IoT家電で事故が起きることに対する懸念があるからです。

製造物は無過失責任になるため、メーカー側に過失がなくても、製造物による事故が起きればメーカーが責任を負います。一方、IoT家電はユーザーが他のIoTデバイスと組み合わせ、使い方をカスタマイズできる点が大きなメリットです。そこからメーカーが予想もしなかった新しい使い方が生まれるからこそ、IoT家電である意味があるといってもいいでしょう。しかし品質保証の観点からは、予想できない使い方をされればどんなことが起こるか分かりません。

こうした現在の制度の下では、日本メーカーの製品は、自社製品としかつなげられないなど使い方を制限するようなものになりがちです。IoTのメリットを最大限に引き出すには、新たな法律や社会制度の整備が必要になる場合もあるでしょう。そうなると一企業だけでは解決できませんし、製造業以外の企業にも影響を及ぼす課題ですから、国を挙げた検討が必要になると思います。

サイバーとフィジカルが融合、フィジカルに強みを持つ日本企業には勝機がある

――日本のものづくりの勝機はどこにあると考えられるでしょうか。

一つは、ソフトウエアの開発効率の向上です。従来、ハードウエアの製造効率が指数関数的に向上する一方、ソフトウエアの開発効率は劇的には上がらないといわれてきました。しかし、近年はソフトウエア開発のプラットフォームが登場し、共通する機能を開発者がシェアできるようになったことなどを背景に、開発効率が大きく向上しています。

例えば、今から十数年前に、マイクロソフトに対抗して他社がOSで覇権を取れると考える人はほとんどいなかったでしょう。しかし、スマートフォン用OSの分野ではグーグルやアップルがマイクロソフトの牙城を崩しました。同様に、10年後に別の企業がOSで覇権を取っていることもあり得ます。ソフトウエアの開発効率は上がっていますから、あとは挑戦するという決断だけです。

もう一つの勝機は、インターネット上に流れていないデータの活用です。近年、一部のIT企業によるデータの寡占が問題視されていますが、製造現場から生まれるデータなど、そうした企業がまだ手を出せていない領域があります。6月に政府が発表した「デジタル時代の新たなIT政策大綱(案)」では、デジタル時代の競争の第1幕を「フィジカル(現実)空間の『検索』『コミュニケーション』『消費』などの分野に関するデータを収集し、AIなどを活用して解析を行い、さらなるサイバー空間におけるサービス提供や広告の効率化・高度化につなげるという競争」とした上で、第2幕は「健康・医療・介護、製造現場、自動走行、農業など、フィジカル(現実)空間」が新たな競争の場になるとしています。

センサーなどを使ってフィジカルで現場データを収集し、サイバー空間でAIなどを使って解析を行い、その結果を新製品開発やサービスの高度化につなげていく。そうした「サイバーとフィジカルの融合」は、すでにサイバー空間で強みを発揮している海外企業が、今後、その力でもってフィジカルまで進出しようとするでしょう。しかしフィジカルが得意な日本企業がその強みを生かせれば、十分に勝機はあると思います。

越塚氏によるまとめ

  • ものづくりは「どんな価値を提供するのか」をサービスと一体で考えることが重要に
  • 国全体が一つの工場になる「インダストリー4.0」で、ものづくりは「総合格闘技」に
  • 「サイバーとフィジカルの融合」で勝つには、都市開発や法制度など国を挙げた検討が必要

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