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トップ > ITのチカラ [Vol.18] 「ニューノーマル時代」に求められる働き方とテレワークが果たす役割 > P2
労働生産性向上に向けて「働き方改革」の必要性がうたわれてきたが、実行できていた企業は多くない。新型コロナウイルス感染症拡大を機にテレワークによる在宅勤務の導入が進む中、本来の目的である生産性向上に焦点を当てた「ニューノーマル時代」の働き方について、慶應義塾大学大学院の鶴 光太郎さんに聞いた。
今回のポイント
ソリューションレポート
――コミュニケーションや業務の評価が難しいという声も聞こえてきます。
テレワークの導入で必要になるインフラやセキュリティの問題をクリアした次の段階で課題とされているのが、コミュニケーションと従業員の評価や労務管理です。
しかし、コミュニケーションや評価が問題視される背景には、新しいツールを使いこなせていない人が多いということがあるでしょう。「同じ職場にいないと意思疎通や仕事ぶりが評価しにくい」という声もありますが、オンライン会議や業務の進捗などを管理するツールも進化しています。オンラインでも表情やボディーランゲージは伝わりますし、気軽に呼び掛けたり、チャットで会話したりできる機能も搭載されています。労務管理や評価についても、「部下がオフィスにいたかどうか」でしか労務管理や業務の評価ができないのだとしたら、その管理や評価の方法、あるいは基準そのものを見直すべきでしょう。
もちろん、「会議が終わった後のちょっとした雑談からアイデアが生まれる」、職場になじんでいない新入社員が「隣の席の先輩にちょっとした質問をする」といった職場内のコミュニケーションは、テレワークでは起きにくいのは事実です。しかし、そうした「意図せず起きていたコミュニケーション」をあえて意図的に行う仕組みをつくる工夫は可能です。例えばオンライン会議ツールで雑談会を開催し、入室も退室も自由にしてもらいながら、ちょっとした会話ができる機会を設けるというのも一つの方法です。テレワークにおけるコミュニケーションや労務管理の問題は、その多くが解決可能なものだといえます。
――テレワークの本来の目的である生産性向上に向けて、どんな施策が必要でしょうか。
最新のテクノロジーを駆使してテレワークに必要なインフラを整え、デジタル化を推進することは大前提です。その上で重要なのは、「テレワークで生産性を向上させられる」という経営層の意識改革でしょう。
現在50代以上になっている人の多くは、職場での密接なコミュニケーションや対面での打ち合わせを通じて業務を遂行する方法に慣れ親しんできた世代です。「あうんの呼吸」で意思疎通を図ることが、効率的な情報伝達システムだったのです。「対面でやる」ことや「職場全員でやる」ことが前提の成功体験があるため、どうしても「テレワークはダメ」と考えがちです。しかし新しいテクノロジーが登場したことで、テレワークでも従来の手法以上に効率的に業務を行うことは十分可能になっています。「リモートでできない理由」を探し続けるのではなく、「リモートでどうすれば実現できるか」を考え、新たな働き方を推進することが生産性向上と企業の競争力強化につながるという意識を、特に企業の経営層には強く持ってほしいと思います。