写真集制作レポート

第1回SHINESに入選した8名が、いよいよ写真集を制作していきます。写真を「撮る」こと、「選ぶ」こと、そして「写真集」という本に仕上げること。それぞれに別の視点が必要です。「写真」から「写真集」へ。その制作過程は自問自答の連続でした。少しずつゴールを見出していく彼らの一部始終をレポートします。

個別ミーティング/
Photographer アバロス村野敦子氏 Vol.1

1st meeting

日本の東西に横切る「フォッサマグナ」という地溝帯をテーマに日本を撮り続けているアバロス氏。多くのダミーブックを作成し、写真集のアイデアに溢れるものの、自分自身でまだ撮り足りていないとも感じています。さらに、「フォッサマグナ」を一般の人にもっと知ってほしいという気持ちから、写真集に学術的な説明が必要ではないかと考えています。そんなアバロス氏に対し、グラフィックデザイナーの町口氏はこうアドバイスします。

【町口氏からのアドバイス】

説明が必要な人は専門書を読めばいいはずです。これから作る写真集は、アバロスさんが介在してこそ、アバロスさんの作品と言えます。まずは第三者のことは考えず、自分が何を表現したいのかを第一に考え、写真集を主観的に構成してみてください。気をつけなければならないのは、写真集を作るという「ものづくり」の視点でテーマに取り組んでいると、ダミーブックを作っても、「まだ素材が足らない」と、いつになっても満足ができない可能性があるということ。まずは写真にフォーカスして、このテーマに関して「撮り終えた」と思えることが重要です。

2nd meeting

多くのダミーブックを作成する中で、自分の写真集に対して客観的になれていないことに悩むアバロス氏。今回、再度新たなダミーブックを作成してきましたが、言葉が活きてしまい、言葉の本に傾いていると町口氏より指摘を受けました。

【町口氏からの指摘】

アバロスさんは、写真に対する気持ちより、本を作るという気持ち、言葉を編むという気持ちに意識が飛びがちです。ダミーブックをここまで組んできたことは素晴らしいですが、もう一度、写真自体に目を向けてください。「この作品は写真だけでいい。言葉はいらない」となるのが写真です。その強度がない限り、いくら工夫を凝らしても写真集としての表現は弱くなってしまいます。

次回までに、写真に順番をつけることになりました。それは、写真集のレイアウトを考慮した順番ではなく、写真のみの順番です。番号をつければ、本という物質の空間が見えてくる、読み手はその空間を見ている、と町口氏は言います。