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デジタルの力を最大限に活用し、ビジネスの在り方を変革していくDXが大きなうねりとなってきた。そんな中、ものづくりの現場に大きな変革をもたらすと注目を集めているのが「MR」だ。キヤノンが研究・開発を続けてきた最先端のデジタル技術が持つ可能性を探る。

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  • 2021.06.01

Episode.32 「MREAL S1」

「MREAL」の活用で進む日本のものづくり革命

写真:高橋哲人 キヤノンITソリューションズ(株)エンジニアリングソリューション事業部で「MREAL」のセールスを担当する高橋哲人

そんな注目が集まるMRとは、どのような技術なのだろうか。

「まずxRを構成する技術の違いについて説明が必要でしょう。VRは、見えているもの全てがCGで構成された仮想空間を表示する技術です。高い没入感が特徴ですが現実空間とは隔離されます。ARは現実空間にデジタルの要素を追加して表示することで、現実空間を拡張する技術のこと。これらに対してMRは、現実空間と仮想空間を融合させる技術だといえます。『MREAL』では、ヘッドマウントディスプレイのカメラで撮影した目の前の現実映像と、用意した3D CGのデータを合成するビデオシースルー方式を利用しているため、3D CGが透けず、本当にそこに存在するかのように見ることができます。さらにユーザーの手や指先の位置を検知し、3D CGとのサイズや距離の関係も正確に表示できます」

こうした特徴を持つ「MREAL」はさまざまなシーンで利用できるが、中でも生産技術の分野での活用が進んでいる。

「例えば、工場の生産設備は一度つくると簡単につくり直すことができません。そのため、機器をどう配置すれば作業効率が良いか、必要なボタンに手が届くか、長時間の作業でも辛い姿勢にならないかなど、オペレーションの事前検証が欠かせません。従来の検証は図面や3Dモデルを使ったパソコンの画面上での検討に、経験などを加味して行っていましたが、どうしても精度に限界がありました」

「MREAL」はこうした検証の精度向上に利用され、効果を発揮しているという。

「計画や設計の段階で、実際に作業するオペレーターに『MREAL』を使ってテストしていただければ、事前に修正すべき点を見つけることができます。開発のコストや時間を大幅に削減できると多くの企業が活用を始めていて、中には新しい生産設備を立ち上げる際には、必ず『MREAL』での検証を行うという企業もあります」

キヤノンITSで「MREAL」の営業を担当する高橋哲人は、デザインの分野でも取り組みが進んでいると話す。

「自動車などの工業製品のデザインでも、3D CGと実際の手や指先との位置関係を正確に表示できる特徴を生かし、『MREAL』をユーザーインターフェースの検証に利用している企業があります。また、『MREAL』は遠隔連携機能を搭載しているため、複数台をネットワークに接続すれば、一つの3Dデータを複数の拠点で共有できます。この機能を利用すれば、例えば、東京と大阪にいるデザイナーが同じ3D CGを見ながら同時にデザインの検討ができるわけです」

コロナ禍で人の移動や一カ所に集まることに制限がある中、遠隔連携機能に興味を持った企業からの問い合わせも増えているという。

活用領域が広がる「MREAL」だが、高橋はより多くの人に利用してもらうための施策の必要性も感じていたという。

「これまで『MREAL』として提供してきた『MD-20』『MD-10』は、性能を追求したフラッグシップ機。そのため、より手軽に扱える製品が欲しいという要望も少なくありませんでした」

「MREAL」に関心を持つ企業が求める「手軽さ」とはどのようなものだろうか。高橋は、大きく三つの要望があると話す。

「一つ目は機材のサイズです。従来は高性能なデスクトップ型のパソコンを利用する必要がありましたが、移動に手間がかかるためシステム全体をコンパクトにしてほしいという要望でした。二つ目は準備にかかる手間です。従来は現実空間と3D CGの位置合わせのため、壁や天井に光学式センサーやマーカーを設置する必要がありました。光学式センサーは利用する場所が限られ、マーカーも準備に時間がかかります。こうした制限をなくしてほしいというものです。三つ目は価格です。比較的安価なエントリーモデルに対する要望は多くありました」

そうした声に応えて開発されたのが、「MREAL S1」だ。

画像:「MREAL」の特徴 1.臨場感あふれる実寸大の世界 2.見る位置を選ばない自由な視点 3.複数人体験・遠隔連携 4.CGと現実物のインタラクション

「MREAL」の特徴
MRシステム「MREAL」の特徴は、現実の映像と3Dデジタルデータをリアルタイムで合成して映像をつくり出す「ビデオシースルー方式」を採用することで、目の前の現実空間に、サイズや位置関係をデジタルデータで正確に表示できること。3Dマッピング技術を活用した高精度な位置合わせを行うことで、リアルな体験が可能となる。

画像:利用シーン1:デザイン検討 デザインのイメージを実寸大で共有。施工前に完成後の姿を体感。モックアップとCGの組み合わせでよりリアルな検証。気流や温度分布を直感的に体感。

実寸大でのリアルな検証や共有が可能
車や飛行機、建築物、部屋の内装など、大きなサイズのものでも、「MREAL」では実寸大のリアルな立体イメージとして見ることができるため、設計図やパソコンの画面で行うよりも精度の高いデザインの検討が可能になる。

画像:利用シーン2:作業性検討 立ち位置や周辺環境を確認しながら作業性を検証。大規模な工場レイアウトを把握。点群データを活用した事前検証

精度の高い作業性やレイアウトの検証を実現
工場での作業者の立ち位置や周辺環境の確認、個人差を考慮したレイアウトの検討、工場における機器の配置の検証なども、実際の作業者が「MREAL」を利用することで、より高い精度で可能になる。

画像:利用シーン3:遠隔共有 臨場感あふれる遠隔地との空間共有

複数のユーザーが同じ空間でデジタルデータを共有
ネットワークを介して、複数のユーザーが同じ空間内でデジタルデータを共有することで、本社と支店など異なる場所にいるプロジェクトメンバーでの共同作業が可能になり、距離によるコミュニケーションギャップの課題を解決できる。

画像:利用シーン4:教育 実践に近い教育環境での学習効果の向上。危険な作業を安全かつリアルに体験

より実践的な環境での教育が可能
マニュアルや動画、完全な仮想空間での体験となるVRなどと比較して、現実空間でのよりリアルで実践的な環境を用意できることから、生産現場における技術の継承や、危険回避のための安全教育といったシーンでも活用が広がる。

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