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デジタルの力を最大限に活用し、ビジネスの在り方を変革していくDXが大きなうねりとなってきた。そんな中、ものづくりの現場に大きな変革をもたらすと注目を集めているのが「MR」だ。キヤノンが研究・開発を続けてきた最先端のデジタル技術が持つ可能性を探る。

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  • 2021.06.01

Episode.32 「MREAL S1」

扱いやすさが進化したコンパクトな「MREAL S1」

写真:竹谷明人 キヤノン(株)イメージコミュニケーション事業本部で「MREAL S1」のハードウエア電気設計を担当した竹谷明人 写真:武本和樹 キヤノン(株)イメージコミュニケーション事業本部で「MREAL Platform 2021」のソフトウエア開発を担当した武本和樹

「MREAL S1」の特徴の一つが、コンパクトかつ軽量なヘッドマウントディスプレイ。本体は手のひらに収まるサイズで、質量は約137グラムだ。半導体など電気関連部分の開発を担当したキヤノンの竹谷明人は、その特徴をこう説明する。

「持ち運びできるコンパクトさ、準備を含めた扱いやすさの向上を『MREAL S1』では目指しました。この本体に複数の高解像度カメラと高精細ディスプレイ、各種センサーが収まっています。また、ヘッドマウントディスプレイの装着位置をダイヤルで簡単に調整できるヘッドマウントユニットも新たに開発したことで、装着する際の手間も軽減しています。さらにシステム全体も大幅にコンパクトになっており、ノートパソコンとヘッドマウントディスプレイをビジネス書程度の大きさのインターフェースボックスを介して1本のケーブルで接続するだけで利用できるようになりました」

準備の手間も大幅に軽減された。「空間特徴位置合わせ」と呼ばれる技術で、光学式センサーやマーカーが不要になったのだ。「MREAL」の最新制御ソフトウエア「MREAL Platform 2021」の開発に携わったキヤノンの武本和樹が説明する。

「ヘッドマウントディスプレイに内蔵されているカメラ4台のうち、2台は位置合わせ用のカメラです。『MREAL Platform 2021』は、現実空間の映像から、天井や壁の角、地面や床の模様などの特徴を読み取り、位置と距離を記録した3Dマップをつくります。そのデータを基にユーザーが現実空間のどこにいて、どこを見ているかをリアルタイムで把握することで、3Dデータのサイズや位置を現実空間と正確に融合させて表示します」

システム全体がコンパクトになったことと合わせ、利用環境の制限や準備に必要な手間が減ることで、実際の工場で生産設備を設置する場所での検証が容易になるなど、柔軟な利用が広がったという。

「MREAL S1」のヘッドマウントディスプレイを装着すると、現実空間には存在しない3D CGが目の前に現れる。直前まで見ていた空間に突然存在しない物体が本物のように表示されるのは、ゲームのような仮想空間でのVRを経験していても新鮮だ。現実空間との距離感やサイズが正確なため、例えば自動車のデジタルデータであれば、近づいたり離れたりしながら色や形状の確認ができる。

ユーザーの手を自動的に認識して表示するため、車内でハンドルに触れたり、スイッチを押したりといった操作も可能だ。こうした操作を違和感なくできるようにするには、実際の手と3D CGの位置が正確に重なる必要があるため、計測機器に近い厳密な基準に沿って設計することで、高い精度を実現している。また、ヘッドマウントディスプレイには新設計の薄型光学系を搭載し、カメラと目の距離が近づいたことで、自分の手などの大きさや距離感がより自然に見えるようになったという。

画像:「MREAL」のシステム構成

「MREAL」のシステム構成
「MREAL」システムは、ヘッドマウントディスプレイをはじめとしたハードウエアと、「MREAL」の基盤ソフトウエアである「MREAL Platform」、3Dデータを表示するための「MREAL Visualizer」をはじめとする「MREAL表示アプリケーション」で構成される。

画像:「MREAL S1」ヘッドマウントディスプレイ

「MREAL S1」ヘッドマウントディスプレイ
約137グラム(ユニットを含むと約338グラム)の小型・軽量化を実現しながら、高い色再現性を持ったディスプレイを装備、さらには現実感覚と同じサイズ感や奥行き感を実現するための光軸一致構造を採用するなど、高度な技術が盛り込まれている。また、装着ユニットには人間工学の知見を生かした調節機構を採用し、さまざまな頭部の形状やサイズに適応する。

画像:「MREAL Platform 2021」

「MREAL Platform 2021」
「MREAL S1」を動かすための基盤ソフトウエア「MREAL Platform 2021」。位置合わせや各種設定を行うほか、プレビューツール上から体験中のさまざまな情報を確認できる。「MREAL S1」の登場を機に予想される幅広いユーザーにも安心して利用してもらえるよう、直感的で操作しやすいユーザーインターフェースを採用している。

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