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この十数年で写真を巡る環境は大きく変化した。その変化を巻き起こしたのは、デジタルカメラ、スマートフォン、そしてSNSだ。写真がより手軽に、大量に撮られるようになる一方で、プリントされる写真の数は減少している。しかし、紙に印刷して手元に残しておけるプリントの“価値”は決して変わらない。キヤノンのフォトブック作成サービスは、そこに新たな光を当てようとしている。

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  • 2016.12.01

Episode.15 「フォトブック作成サービス」

本サービスは2021年12月15日をもって終了しました

自動画像解析・レイアウトエンジンを育てたアプローチ

ソフトウエア開発のエンジニアとして携わったキヤノンの國枝寛康は、「EAGiAL」の仕組みを次のように説明する。

「まずアルバムに使う写真の入ったフォルダを指定します。すると『EAGiAL』はフォルダの中の写真を分析して、三つの観点から得点を付けて“いい写真”を選び出します。一つ目は『構図』です。人物がクローズアップで写っているような写真だけでなく、写っている人物と背景のバランスなどを評価して得点化する仕組みになっています」

二つ目は「写り」、三つ目が「コンテンツ」だという。

「『写り』は明るさや色味、ボケ、ピントなどです。これは分かりやすいでしょう。『コンテンツ』というのは、写真の主人公が誰か、写っている人が笑顔か、顔の向きや目をつぶっていないかといった“内容”を評価する項目です。人物だけではめりはりが出ませんから、景色のような人物以外が写っている写真も考慮するように工夫しています」

これらの得点に、撮影日時といった情報を加味することで、フォルダの中の写真が絞り込まれる。

「ここからさらに撮影シーンを分類します。撮影シーンにおける写真の傾向をいくつかのパターンとしてあらかじめ学習させておき、どのパターンに近いのかを判定するのです。1冊のフォトブックにまとめる場合、大切なのは“ストーリー”が感じられることです。撮影シーンを解析するのは、写真をただ並べるのではなく、撮影シーンに応じて“ストーリー”が感じられるような配置にするためです。これらの解析結果を基に『EAGiAL』は写真を選び、レイアウトします」

そうしたアナログ的、人間的ともいえる判断を、どのようにプログラム化したのか。そんな疑問を投げ掛けると、國枝は安部と顔を見合わせ、「大変でしたよね」と笑いながら話を続けた。

「正解は一つではないので、とにかくたくさんのケースを想定して撮影シーンの分類を行ったという感じです。その過程では自分たちで撮った写真を持ち寄ってテストを繰り返しました」

その上、「PhotoJewel S」には、動画ファイルから静止画を自動的に切り出してアルバム用の写真にする機能も搭載されている。この機能の実現に向けて、大量の動画を自分たちで撮影してテストを繰り返したという。こうした苦心の結果、動画から切り出した静止画と写真がバランスよく配置できるようになった。

写真:國枝寛康 キヤノン(株)インクジェット事業本部で「PhotoJewel S」のソフトウエア開発に携わる國枝寛康 画像:自動画像解析・レイアウトエンジン「EAGiAL」 自動画像解析・レイアウトエンジン「EAGiAL」
「PhotoJewel S」で、写真の選択とレイアウトを自動で行う仕組みが、自動画像解析・レイアウトエンジン「EAGiAL」。写真の「構図」「写り」「コンテンツ」という要素を解析して採点し、その結果を基に最適な写真の選択と配置を自動的に行う。忙しい人や写真の整理や写真選びが苦手な人でも、簡単にフォトアルバムの作成ができる。
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