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トップ > Cのキセキ Episode.18 「プロダクションプリンティングソリューション」 > ケーススタディ
歴史が長く、技術的にも市場的にも成熟している印刷業界。そこで「デジタル」による大きなうねりが起きている。そんな変化の時代に「商業印刷」の分野で積極的な取り組みを進めているのがキヤノンだ。その最前線にある注目の施設「CEC Tokyo」と新会社「コマーシャルプリンティングラボ」を訪れ、現状キヤノンがその先に描く未来について聞いた。
出版社の流通倉庫として事業を行っている朋栄ロジスティックは、この春からキヤノンのデジタル印刷機を中心としたソリューションを導入し、オンデマンド印刷事業に乗り出した。その経緯と現状を、同社代表取締役の
出版社の流通部門と位置付けられることを目指し、出版物専門の倉庫として小回りの効いたサービスを売りに事業を拡大してきた朋栄ロジスティックは、2017年春、デジタル印刷機「varioPRINT 135」(モノクロオンデマンドプリンター)と「imagePRESS C800」(カラーオンデマンドプリンター)および生産制御・工程管理システムを導入し、書籍のオンデマンド印刷事業「ブックオンデマンドシステム」の提供を開始したが、その背景には厳しい出版の現状があった。
「コンテンツのデジタル化やスマートフォンの普及など、さまざまな要因で"出版不況"が続いています。出版社と共に歩む我々にとっても、そうした厳しい経営環境への対応は大きな課題でした。流通・倉庫業であることを生かしながらできることはないか。以前からその道を探していました」
出版不況の大元をたどっていくうち、"大量生産の限界"に考えが至ったと鴫原さんはいう。
「オフセット印刷は、大量に印刷して初めてコスト削減が可能になる仕組みです。大量に刷らなければ利益が出ないとなれば、より多くの人に支持される書籍しか残れません。そのため、ほんの一部だけれど本当に欲しい人がいる本が絶版になったり、そもそも出版されなくなったりしてしまう。それでは出版文化は縮小していくばかりです。そんなことを考えているときにオンデマンド印刷のことを知りました。出版文化を支えていくには、少部数での印刷でも可能なビジネスに挑戦すべきではと考えるようになったのです」
では、「ブックオンデマンドシステム」が事業として成立すると判断できたのはなぜだろうか。
「当社のような流通部門を持つ倉庫事業者がオンデマンドで書籍の印刷・製本を行うことで、コスト削減や小回りの効く体制をつくれると考えました。実際にデジタル印刷機の導入や運用にかかるコストなどを検討してみると、ビジネスとして成立すると判断できました」
現在、同社が取り扱う書籍には、専門書出版社から刊行された法律書や工学書、歴史書などが多い。いずれもこれまでのオフセット印刷では、在庫切れになってもコスト的に増刷が難しいものばかりだという。
「当初の予想通り在庫・流通コストの軽減によって、増刷しても利益が出る書籍が増えました。このことは出版社にとっても新鮮な驚きだったようです」
実際に運用にあたって課題はなかったのだろうか。
「気になっていたのは印刷のクオリティーです。出版社はその点のこだわりが非常に強く、特に図版や写真、網掛けなどについて厳しい指摘があるのではないかと心配していました。いざ事業が動き出してみると、モノク口であればオフセット印刷に近い仕上がり、力ラー機もさまざまな用紙に対応できてクオリティーも高いと評価をいただくことができました」
朋栄口ジスティックにとって、印刷は未経験の事業。外部からスタッフを雇い入れるなどの対応をしたのだろうか。
「キヤノンの印刷システムは全自動といっていいほど手間が掛からず、製本まで一貫して行えますので、印刷のことを知らなかった当社スタッフでも対応できました。トラブルが発生したとしてもキヤノンさんのサポートがあるので心配はしていません」
デジタル印刷機の導入は、出版社とのこれまで以上の絆をつくり上げると同時に、出版文化への貢献もできたと鴫原さんは考えている。
「非常に大きな一歩を踏み出せたと考えています。今後も流通・倉庫業の立場から、出版文化事業へ何が貢献できるのかを考えていきたいと思っています」
有限会社 朋栄ロジスティック
埼玉県草加市と八潮市を拠点に4カ所、総床面積約800坪の倉庫を保持し、出版社24社の出版流通倉庫として、小回りの効いた在庫管理、迅速な出荷・荷さばきを行う。2017年春からは、新サービスとして書籍のオンデマンド印刷を行う「ブックオンデマンドシステム」の提供を開始。「在庫レスで書籍の印刷・製本・流通を行う」という、これまでにない新しい出版流通の形を実現している。