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トップ > Cのキセキ Episode.18 「プロダクションプリンティングソリューション」 > P4
歴史が長く、技術的にも市場的にも成熟している印刷業界。そこで「デジタル」による大きなうねりが起きている。そんな変化の時代に「商業印刷」の分野で積極的な取り組みを進めているのがキヤノンだ。その最前線にある注目の施設「CEC Tokyo」と新会社「コマーシャルプリンティングラボ」を訪れ、現状キヤノンがその先に描く未来について聞いた。
これから「CEC Tokyo」でデジタル印刷の実力を体験することで、新たなビジネスに乗り出す企業は加速度的に増えるだろう。商業印刷を新しい領域へと広げる可能性を持つデジタル印刷だが、その効果を最大限に生かすには、印刷する前のコンテンツ作成やシステム構築といった部分が重要な役割を果たす。バリアブル印刷を例にしても、ユーザーの属性データをどう分析するか、個々のユーザーに合わせたコンテンツをどう作るか、一枚一枚異なる印刷用のデータをどう作るか、というソフト面だ。
「印刷機がスペックの優劣で売れた時代はもう終わりました。特にデジタル印刷機では、お客さまのビジネスを伸ばす魅力的な"ソリューション"として、印刷前、印刷後を含めた提案をしなければなりません。正直、そこはまだまだこれからの分野。キヤノングループとしてさまざまな取り組みをして、知見を貯めていく必要があると考えています」
そこでキヤノンMJグループは、驚くような施策を行った。「CEC Tokyo」のオープンと同時期に、コンテンツ制作を得意とする石田大成社をパートナーに「コマーシャルプリンティングラボ」という会社を立ち上げた。普通の印刷会社のように、コンテンツ制作から実際の印刷までを行う。
「デジタル印刷は、印刷機の機能や性能だけでなく、その強みを生かしたソリューションとセットになってこそ本領を発揮します。そのためには我々自身が印刷会社となってみて、エンドユーザーのニーズに対する感度を高めなければ、実際に印刷機を利用する印刷会社にとって魅力的なソリューションを提案することはできないと考えました」
同社の代表取締役社長に就任した栁沼 博は、その目的をこう話す。
デジタルならではの実践的な試みに積極的に挑戦すること。そこから商材を発掘すること。それらを通して商業印刷に精通した人材を育成すること。そして最終的に、お客さまである印刷会社に蓄積した知見をフィードバックすること。そうした社名の"ラボ"にふさわしい役割を、同社は果たしていくという。
「東京・江東区にある工場では印刷設備だけでなく、ワークフローも公開しており、実際の工程を見学していただけます。『CEC Tokyo』が仮説検証だとすると、こちらはより実際のビジネスに近い姿を体験していただける施設だといえます」
東京工場では、自動車の車載マニュアルの在庫を減らすために小ロットで印刷したり、生産効率を高めるために複数の車種を一度に印刷したりといった取り組みを皮切りに、パンフレットや教材の制作などさまざまな試みも始まっている。将来的には、他の印刷会社をサポートする形で実験的な印刷を請け負うことも検討しているという。
「最終成果物まで自分たちで手掛けるようになったことで、エンドユーザーだけでなく印刷会社の方とも、同じ目線で話ができるようになってきた感覚があります。ですが、やっとスタート地点に立っただけ。これから東京工場や『CEC Tokyo』での知見を、我々だけでなくキヤノンのデジタル印刷機を使われる印刷会社にもフィードバックして、新しい商業印刷の世界を共に進んでいけたらと考えています」
栁沼が強調する商業印刷分野でのキヤノンの役割は、デジタル印刷の可能性によって新たに生まれようとしている市場にアプローチし、これまでの印刷業界にはないソリューションを構築するという壮大なものだ。
「CEC Tokyo」を核に起きようとしている商業印刷の変革。そこでは、新しいビジネスの種が萌芽(ほうが)の時を待っている。
"体験"を提供する「CEC Tokyo」と
コマーシャルプリンティングラボ
「CEC Tokyo」は、印刷会社やプリント事業所などのプロダクションプリンティング市場に特化して事業を行うキヤノンプロダクションプリンティングシステムズが運営する。単なるショールームではなく体験施設でもあるというところに大きな特徴がある。一方、印刷関連のコンテンツ制作や印刷事業を担当するコマーシャルプリンティングラボは、エンドユーザーからの要望をキヤノングループにフィードバックし、ソリューションを構築する役割も果たす。