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キヤノンマーケティングジャパングループにおける「数理技術」への取り組みは、長い歴史を持つ。モバイル、IoTが普及し、かつてないほど大量、かつ多様なデータを活用できる環境が整った現在、改めて注目される「数理技術」の可能性を展望する。

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  • 2021.03.01

Episode.31 「数理技術」

複雑化する企業の課題に最適解を導く「数理技術」

写真:今井太一 キヤノンITソリューションズ(株)の数理技術部門で「数理技術」の活用による企業の課題解決の提案に携わる今井太一

昨今の企業を取り巻く課題はますます複雑化している。少子高齢化が進むわが国では、生産年齢人口の減少に伴う人手不足があらゆる業界・業種で顕在化しており、業務の抜本的な効率化が求められている。

例えば物流業界はドライバー不足などの課題を抱えていたところに、"巣ごもり需要"の高まりを受けたネット通販の利用拡大などで物流量は増大しており、商品配送計画体制の見直しが急務になっている。

また、企業は単に自社の利益のみを追求すればよいわけではなく、地域の人々と共生し、貢献していくという社会的責任を果たしていかなければならない。2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でも、持続可能な生産や消費形態を確保することを目的とした「つくる責任 つかう責任」が目標の一つとして掲げられており、企業には天然資源の持続可能な管理と効率的利用、食品廃棄物の削減、化学物質などの放出の低減などが求められる。

ITを中心としたテクノロジーの動向に目を向けると、モバイルやIoT(モノのインターネット)の普及により、企業はかつてないほど大量、かつ多様なデータを入手できる環境が整ってきた。こうしたデータを最大限に活用しながら最適解を導いていくことが、先述のような課題への効果的なアプローチとなる。

そうした中、注目すべきが「数理技術」と呼ばれる手法だ。どのような技術なのか、キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループ会社のキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)数理技術部門の今井太一は、このように説明する。

「キヤノンITSが取り組んでいる『数理技術』は学術的にはオペレーションズ・リサーチ(Operations Research/以下、OR)と呼ばれ、1930年代の英国における防空体制の研究が起源だといわれています。当初は軍事目的で利用されてきましたが、第二次世界大戦後には平和目的に活用されるようになり、企業が保有する人や設備の資源を効率よく運用する手法として、主として鉄鋼、石油、ガスなどの大規模装置産業を中心に発展を遂げてきました」

日常の身近なところでも「数理技術」は使われている

そして現在、「数理技術」はコンピュータ技術の進歩と合わせ、生産・物流管理システムなどで活用されるとともに、さまざまな業界へと適用分野を広げているが、実は日常生活の身近な場面でも数多く使われている。今井は次のような例を挙げる。

「初めての場所に行くとき、スマートフォンの乗換案内アプリを使えば、最も乗り換えが少なくて済む最適ルートや、おおよその到着時間を簡単に調べることができます。実はその裏側でも『数理技術』が応用されています。また、コンビニに行けば自分の買いたい商品がいつも揃っていますが、これも『数理技術』によって精緻な需要予測と店頭発注が行われているからこそです」

鉄鋼業などの装置産業から発展してきた「数理技術」ならではの特長として、「大きなかたまりから小さなものを効率よく切り出すことも得意」だ。今井はこんな例も示す。

「製品パッケージも典型例の一つです。一枚の大きな紙から部材を切り出して、さまざまな製品パッケージなどを作るわけですが、そこで無駄な端切れを出さないように、切り出す最適なパターンを決める工程でも『数理技術』が使われています」

画像:オペレーションズ・リサーチとは

オペレーションズ・リサーチとは
キヤノンITSが長年にわたり研究開発を続けてきた「数理技術」は、学術的にはオペレーションズ・リサーチと呼ばれる数学的な視点・手法により解決を目指す科学的手法。

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