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キヤノンマーケティングジャパングループにおける「数理技術」への取り組みは、長い歴史を持つ。モバイル、IoTが普及し、かつてないほど大量、かつ多様なデータを活用できる環境が整った現在、改めて注目される「数理技術」の可能性を展望する。

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  • 2021.03.01

Episode.31 「数理技術」

配送計画を最適化し物流業務の効率化を支援

キヤノンITSは、2000年代以降の知見とノウハウに基づいたソリューションを、顧客の課題解決のために提供してきた。その中から代表的なものを見てみよう。

まずは、ロジスティクス分野での業務効率化を支援するソリューションである「RouteCreator(ルートクリエイター)」だ。

先述のように、現在の物流業界は慢性的なトラックドライバーの人手不足に加えてインターネット通販の拡大により物流量の急増に直面しており、ドライバーやトラックなどのリソースを無駄なく活用するための配送計画の最適化が喫緊の課題となっている。

こうした問題を「RouteCreator」はいかなる方法で解決するのだろうか。今井はこのように説明する。

「お客さまの実績データを基にした配送の最適化シミュレーションを実施し、各種の条件を加味したチューニングを繰り返しながら、個々の状況に合わせた配送計画を作成します。また、約30種の制約条件判定機能を搭載した配車最適化機能を活用しながら、配送業務知識をもつ数理技術部門のエンジニアが一貫してサポートし、企業ごとの業務特性に合わせて最適化チューニングを行う配送計画サービスを提供することで、配送効率化によるコスト削減を実現します」

「RouteCreator」を導入する主なユーザーは物流業者だが、近年では荷主側の企業からの需要や引き合いも拡大していると今井は話す。

「複数の物流業者と契約している大手製造業など、物流や配送の業務を一括して依頼している場合、ルートや到着時間もバラバラになりコントロールが効かなくなります。そこで『RouteCreator』を使ってあらかじめ策定した配送計画に基づき、最適ルートを指定して配送を依頼するケースが増えています」

「RouteCreator」の適用範囲は必ずしも物流業務だけに限らず、人が移動する業務についても適用が可能だ。例えば、キヤノンMJグループが開発した「立会最適マッチングシステム」もその一つだ。「RouteCreator」により、損害保険会社における調査業務の人選や調査ルートを効率化するもので、災害発生後に現地でスタッフが行う被害の調査や査定の迅速化を実現している。

画像:「数理技術」を活用したソリューション例

「数理技術」を活用したソリューション例
「数理技術」は、生産計画・スケジューリング、需要予測・在庫計画、ロジスティクス最適化、数理最適化、データ分析、シミュレーション・制御などに向けたソリューションに適用することで、多種多様な業種・業界における課題解決に貢献している。

画像:配送計画ソリューション「RouteCreator」

配送計画ソリューション「RouteCreator」
「RouteCreator」は「数理技術」を活用して、配送計画の自動化を中心に物流の効率化を支援するソリューション。実績データを基に配送の最適化シミュレーションと、その分析結果による条件設定のチューニングを経て、配送計画システムの構築を行う。

精緻な需要予測・需給計画で欠品なき在庫削減を支援

次に取り上げるのは、需要予測・需給計画ソリューションの「FOREMAST(フォーマスト)」だ。

キャッシュフロー経営が叫ばれる中、多くの企業で在庫削減が重要な経営課題となっている。一方で、顧客からの即納・短納期要求はますます高まっており、欠品の発生が企業経営に多大な影響を与えるケースも増えてきた。そうした中で「FOREMAST」は、「数理技術」を活用した需要予測に基づいて在庫補充計画および需給計画を支援し、さらに実績情報の共有化や問題の見える化を進めることで、欠品なき在庫削減を支援する。

このソリューションに対するニーズが高いのは大手食品メーカーを中心とした製造業だ。そこには大きな理由があり、今井はこう語る。

「食品メーカーのお客さまが抱えている最大の課題が賞味期限への対応です。需要予測に基づいて商品を製造し出荷しますが、予測よりも需要が下回ると在庫がどんどん増え、製造日から数えて賞味期限の三分の一の期間を過ぎてしまうと業界ルールにより、小売店に卸せなくなってしまうのです。それらの商品は廃棄せざるを得ず、大きな損失となるのはいうまでもなく、食品ロス削減の取り組みからも逆行してしまいます。これに対して『FOREMAST』は賞味期限を織り込んで在庫計算を行う機能が標準で用意されており、より正確な生産・仕入計画が可能となるのです」

また、製造業以外では医療保険・生命保険会社が「FOREMAST」を導入するケースも見られる。

医療保険・生命保険会社ではさまざまな保険商品の内容を詳細に説明した申込書付きの紙パンフレットを大量に印刷して用意しているが、法改正や料金改定などが行われた場合、古くなったパンフレットは破棄しなければならなくなる。そこで紙資源の無駄遣いを減らすため、パンフレットを一度に大量に印刷するのではなく、需要予測を行いながら適正量のパンフレットを適切なタイミングを見計らいながら印刷するという、精緻なコントロールを「FOREMAST」によって実現している。

画像:需要予測・需給計画ソリューション「FOREMAST」

需要予測・需給計画ソリューション「FOREMAST」
「FOREMAST」は「数理技術」を活用した需要予測に基づく在庫補充計画と、需給計画・実績情報の共有支援、問題の見える化により、欠品なき在庫削減を支援するソリューション。課題に合わせて必要な機能を組み合わせて導入可能で、既存の社内システムと連携し、的確な需給マネジメントを実現する。

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