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トップ > 特集 Canon EXPO 2023 > P5
デジタルイノベーションによって、産業や社会、働き方や暮らし方までもが大きく変わろうとしている。そのような中、キヤノンは、時代の要請やビジネス環境の変化に適応し、生まれ変わったキヤノンの姿、そしてこれからも変化し続ける姿を示すため、8年ぶりに「Canon EXPO 2023」を開催。キヤノンの技術が描く新たな社会の可能性を紹介した本イベントの模様をお伝えする。
「Canon EXPO 2023」の会場となったパシフィコ横浜ノースでは、人工知能、カーボンニュートラル、宇宙ビジネス、リスキリング、DXなど多様なテーマのセミナーを数多く開催した。ここではキヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループによるセッションの内容を紹介する。
企業間取引書類の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応はDX推進の糸口となるが、義務と捉えている企業も少なくない。キヤノンMJの中田龍二は、「外部環境の変化への対応が今後も増加していくと考えると、個別最適化だけでは限界があります。今回の法改正対応をフレキシブルな全体最適化への機会とすることが重要です」と説く。
そこで考慮すべきなのは企業が管理しなければならないドキュメント資産だが、数百種類に及ぶ重要書類の大半がバラバラに管理されているのが実情だ。しかもその約80%が各種文書や音声、映像などの非構造化データである。「従業員の手元にあるデータを活用し、ビジネスで価値のある情報を生み出せるかどうかは、情報ガバナンスの成否にかかっています」と中田は強調する。
こういった顧客ニーズに合わせてキヤノンMJグループが提供しているのが、お客さまの業務プロセス変革と経営資源である業務データの利活用を促進する、クラウド型のデジタルドキュメントサービス「DigitalWork Accelerator」だ。「電子取引管理サービス」をプラットフォームとし、業務特化型のサービスや業種別サービスを順次拡充・連携させていく。今後もきめ細やかなサービスを提供し、業務プロセス変革に貢献していくという。
人手不足は日本企業全体の深刻な課題となっている。キヤノンMJの寺久保 朝昭は、「お客さまの間で『映像×AI』への期待が高まっています」とし、現場の課題やニーズは、次の4つのステップに整理できるという。
Step1は「何かあったときに見たい」というもの。例えば工場であれば、製造ラインでインシデント発生時の原因究明用途としてカメラで映像を記録する。Step2は「どこからでも見たい」「まとめて見たい」。各工場の複数の製造ラインを遠隔から見られるようにする。Step3は「自動化したい」「検知して教えてほしい」。映像を使ってヒト・モノ・コトをAIで検知し、検査業務などを自動化する。Step4は「判断し助言してほしい」。映像情報に加えて各種データも取り込んだ上で、人に代わって適切な行動を推測して指示する。工場での活用は一例であり、さまざまな場面で「映像×AI」を活用したソリューションを展開している。
ここで重要な鍵を握るのは、IPカメラやVMS※、VSaaS、VCA/AIといった4つの技術領域だ。「各領域のトップベンダーで構成される技術とノウハウで、お客さまの課題解決をサポートし続けます」と寺久保は語り、今後も「映像×AI」であらゆる企業の業務プロセス変革を支援していく考えだ。
※VMS(Video Management Software/System):監視・防犯カメラの映像を、録画・管理・閲覧するためのシステムやソフトウエア/ VSaaS(Video Surveillance as a Service):クラウドによる映像監視サービス/VCA(Video Content Analysis):映像解析技術
「はたらく」の「これから」はどう変わっていくのか。キヤノンMJの浅野潤二は、「『はたらく』の『これまで』は、直接雇用、人材派遣、BPOの大きく3つに分かれていましたが、『これから』は、技術進化の加速と領域が広がることで、BPOの依存度が上がると同時に、紙をなくす動きから『事務をなくす』方向へ変わっていくでしょう。また『働く場』や『しごとの概念』も変わっていきます」と説く。
「ドキュメントに強いキヤノンが紙と事務をなくし、業界事務のプラットフォーム化を進めます。また映像技術で、私たちにしかできない社会貢献を進めていきます」
これが結果として、顧客企業の経営効率化の実現と社員の新規キャリア創出にもつながっていくと考えているという。
一方、映像技術を活用した文化継承の取り組みとして、同社の阿部芳久は全国の祭りにフォーカス。「祭りは地域の人々が『共に生きる』ための知恵が集積したものであり、キヤノンの企業理念『共生』とも合致します」と語る。
日本のまつり探検プロジェクト「まつりと」をはじめ、キヤノンの「技術力」とクリエーターの「表現力」を掛け合わせた体験価値創造を進めており、技術だけでは解決できない課題に対応している。
キヤノンITソリューションズでは、信頼性の高いITインフラを実現するサービスとして「SOLTAGE」を提供している。クラウドインテグレーション、ネットワーク、システム運用・保守、セキュリティ、データセンターの5つのサービスを包含するものだ。同社の山岸弘幸は、「これらを柔軟に組み合わせてご利用いただくことで、お客さまが保有するシステム全体の運用負荷を軽減し、コア業務へリソースを集中させることが可能になります」と語る。
その上で強化しているのが、顧客のビジネス変革に向けた「ビジネスデザイン×ビジネスサイエンス」のアプローチに基づくDX推進支援への取り組みだ。
「お客さまの事業戦略や業界動向を深く理解した上で、DXの戦略策定やITグランドデザインに伴走します」
同社は長年培ってきた数理最適化技術を活用し、DXの戦略立案や、戦略に基づく実行計画の策定、具体的な実行支援を行うメニューを用意し、お客さまに寄り添った柔軟なDX推進を支援するという。
今後も顧客との共創活動を通じて、これからの社会インフラを支えるサービスやDX推進支援サービスを提供することで、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをさらに強化していく。
自社の変革である「守りのDX」と、社外のステークホルダーに向けた変革である「攻めのDX」。この2つのDXを支えるため、キヤノンITソリューションズが注力しているのがローコード開発の活用だ。
18年前から提供し続けてきたローコード開発プラットフォーム「WebPerformer」は、設計から開発、テストまでの全ての工程を高速化することで、「守りのDX」を中心に企業のシステム化に貢献している。同社の松本一弥は、「オンプレミスで、稼働中の老朽化した基幹システムや大規模システムを刷新する際や、紙で実施する申請承認系や煩雑な業務を効率化する場面でも活用いただいています」と語る。
そして2023年1月、「攻めのDX」を支えるシステム開発にも価値を拡大すべく、新たに提供を開始したのがクラウド版の「WebPerformer-NX」だ。UIを刷新したほか、モバイル端末でもGPSやカメラと連携でき、ブラウザさえあればすぐに開発を始められるという。
「UI部分をビジネス部門、ロジック部分をIT部門が担当するといった共創開発も可能です。ローコード開発を単なる開発効率向上だけではなく、ビジネスの柔軟性と革新性の向上につなげていければと考えています」