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トップ > 特集 特別対談「勝てる組織」佐々木則夫さん×坂田正弘 > P4
女子サッカーの代表チームを率いてチームを「勝てる組織」に育て上げた佐々木則夫さん。
体格やパワーで劣る日本人女性がなぜ世界に伍して戦うことができるのか。そして、そこで監督やリーダーが果たしている役割とは──。
名将・佐々木監督と、キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長坂田正弘が、「強い組織」のあり方をめぐって熱く語り合った。
坂田
佐々木さんは、今までチームの中心となる澤選手などのリーダーを育てられてきたと思います。リーダーを見極めるポイントを教えてください。
佐々木
私が重視してきたのは、チームに対する献身的な姿勢です。例えば、重要な局面では体を惜しみなく張ってボールを奪い返したり、相手の攻撃を防いだりする。多くの言葉を語らなくても、そうやって、いわば背中で仲間を引っ張ることができる人こそがリーダーとしてふさわしい。そう考えてきました。それから、勝利に対する強いこだわり、目標を達成することに対する貪欲さを持っていることも欠かせない条件だと思います。
もっとも最近では、仲間たちと言葉で積極的にコミュニケーションを取っていく有言実行タイプのリーダーの存在も必要であると考えるようになりました。というのも、若い選手の中には、「言葉できちんと伝えてくれないと分からない」という人も増えてきているからです。
私は、最適なキャプテンを選ぶことは、監督にとって最も重要な仕事の一つだと思っています。その点では、「よくやっているじゃないか」と自分を褒めてあげてもいいかなと思っていますね(笑)。
坂田
なるほど。やはりリーダーは献身的でなければいけないし、目標達成への貪欲さがなければいけませんよね。
私がリーダーを選ぶ際に重視しているのは、今の仕事や組織の形を平気で壊せるかどうかという点です。社会はどんどん変化しているし、ビジネスの環境も常に変わり続けています。自分たち自身が変わらなければ、その変化に対応することはできないし、継続可能な組織を作っていくことはできません。これまでの成功体験に拘泥せず、変化することを決断できる人がリーダーにふさわしいと思っています。
佐々木
一番は、私自身のことを分かってもらうことですね。自分の性格や考え方をさらけ出しながら、周囲の反応を見て、変えるべきところは変えていく。そういうやり方です。
それから、できるだけ話しかけやすい雰囲気を作るようにしています。こちらがフランクな態度で接していれば、選手の方から積極的にコミュニケーションを取ってくれるようになります。
ビジネスの場合だと、顧客とのコミュニケーションも重要ですよね。
坂田
ええ。お客さまとのコミュニケーションの一番のポイントは、相手の懐に入ることだと思います。しかし、入り方を間違えてはいけない。マナーを守りつつも、自分から本音で話して、先方も本音を言いやすいような雰囲気を作っていかなければなりません。それがなかなか難しいのです。
しかし、それができないとお客さまとの関係を深めていくことはできません。逆に、お客さまと本音で語り合える関係が作れて、お客さまが本当に考えていることが理解できれば、何を提案すべきかが分かります。いかにお客さまの本音をお聞きできるか。それが全てと言っても過言ではないと思います。