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「アイデア」と「思い」が新しい可能性を切り開く よみがえる地方

「地方創生」が日本全体の課題となってから数年がたつ。次第に明らかになってきたのは、「地方」とひと口に言っても、その内実は極めて多様であるということだ。人口減や産業の衰退といった課題は同じでも、それぞれの地域には独自の歴史があり、特有の文化がある。その地域の個性に合った方法でなければ、その地方が創生することはないだろう。各地の独創的な取り組みの中に、地方をよみがえらせるヒントを探る。

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  • 2016.06.01

「アイデア」と「思い」が新しい可能性を切り開く
よみがえる地方

コラム地方人材と外部の革新者との化学反応がイノベーションを生み出す
齊藤義明 さん
野村総合研究所 未来創発センター2030年研究室長

野村総合研究所の未来創発センター2030年研究室では、3年ほど前から「革新者プロジェクト」と題する取り組みを続けています。新しいビジネスモデルを生み出して成功を収めている革新的な経営者と対話し、いわば“革新のネットワーク”をつくること。それがこのプロジェクトの目的です。

昨年から、その革新者たちと地方の志ある方々との交流を促進し、地方を活性化させる取り組みを新たに始めました。私は、地方創生に関して、3つの問題意識を持っています。1つ目は、地方にはアイデアや資金があっても、事業を主体的に担う人が圧倒的に不足していること。2つ目は、地方に雇用を生み出すには、事業を新たにつくり出す経営者が不可欠であること。3つ目は、地方で志を持った人たちに必要なのはネットワークであり、それは彼ら・彼女らをサポートする支援者であることです。これらの課題を解決するには、外から革新者を送り込み、地方の人材との間に化学反応を起こし、新しい動きを生み出すことが必要だと私たちは考えました。

北海道十勝で実施したイノベーションプログラムは、その狙いがかなりの部分で成功した取り組みでした。プログラムに参加したのは、地元の14歳から79歳までの計50人。外部の革新者の方々を交えて、参加者から出されたアイデアを検討していきました。

私たちが求めたのは、事業「計画」ではなく、あくまで事業「構想」です。綿密な計画を立てようとすると、どうしても斬新なアイデアが生まれにくくなります。新しい事業を生み出し、かつそれを継続していく力となるのは、事業を担う人たちの“やりたい”という気持ちであり、強い主体性です。それを数字や常識で縛ってはいけない。そう私たちは考えました。結果、この取り組みの中から10の事業構想が生まれ、3つの会社が起ち上がりました。

従来のビジネスの常識からは、地方を創生させる革新は決して生まれません。顔の見える人と人との連携の中から、これまで見たこともなかった事業を生み出していくこと。それが地方創生実現の鍵であると私は確信しています。

野村総合研究所 未来創発センター2030年研究室長
齊藤 義明(さいとう よしあき)
1988年、野村総合研究所入社。NRIアメリカのワシントン支店長などを経て現職。現在、ダイヤモンド・オンラインでコラム「2030年のビジネスモデル」を連載中。著書『革新者』が近日刊行予定。
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