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トップ > 特集 特別対談「役割を為す」宮本慎也さん×坂田正弘 > P2
19年間所属した東京ヤクルトスワローズのみならず、日本代表チームのリーダー的存在だった宮本慎也さん。
彼はまた、「職業としての野球」に地道に取り組む一流の仕事人でもあった。
長い現役生活を終えて3年。仕事、組織、リーダーのあり方について、キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長、坂田正弘と語り合った。
坂田
アテネ五輪の時に代表チームのキャプテンを務められて、その後も、日本プロ野球選手会会長などでリーダーシップを発揮されました。独自の「リーダー論」があればお聞かせください。
宮本
僕自身は決してリーダーシップがあるとは思っていないのですが、その立場に立たされた時は、言動に気を付けて、できるだけチームメンバーや周囲の見本になるように心掛けていました。
実力がずば抜けている選手は、普通に行動していれば、みんな自然に付いてきてくれるんです。例えば、イチローはそういうタイプです。でも、僕のようにそれほど突出した力のない人がリーダーを務める場合は、いろいろな工夫が必要になります。その工夫の一つが、状況に臨機応変に対応するということです。
坂田
そこでも変化への対応力が求められるわけですね。
宮本
ええ。情報を集め、その時々の状況を見極めて、最良と思える決断をするということです。「これをやったら絶対に成功する」という正解はありませんから、状況への対応力が結局ものを言います。それがうまくできるのがいいリーダーということではないでしょうか。
坂田
なるほど。私は、リーダーの役割は「みんなに自信を持たせること」だと思っているんです。では、どうやって自信を持たせるか。それは、成果を出させることです。仕事で行き詰まっていた人が、いい案件を自分の力で受注できたのをきっかけに大きく成長し始める。そんな場面を私は何度も見てきました。成果が出せるように上手にサポートしてあげること。そして、自信を持って働ける道筋をつくってあげること。それがリーダーの重要な仕事だと思います。
宮本
野球でもビジネスでも、プロの世界は結果が全てですからね。結果そのものはもちろん、「結果の出し方」も僕は重要だと思っています。
野球の場合、結果は自分でコントロールできるものではありません。ピッチャーがど真ん中に投げてくることが分かっていてもヒットにできるとは限らない。それが野球です。だから逆に、自分がコントロールできるところは、しっかりコントロールしなければならない。例えば、サインミスをしないとか、一塁に全力で走るといったことです。それがいい結果につながるということがあります。
それから、プロセスも大事だと思います。プロセスもある程度は自分でコントロールできるからです。「結果を出せるプロセス」を考えなさい。もし結果が出なかったら、もっといいプロセスのつくり方があったんじゃないかと考えなさい──。コーチ兼任だった頃は、そんなことをよく若手に言っていました。
一つ確実に言えるのは、結果を出すために最終的に必要なのは「執念」であるということです。それが有るか無いかで、最後のところでもう一歩先に行けるかどうかが決まる。僕はそう思っています。執念の差が結果の差となる。これはどの世界でも同じではないでしょうか。