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特別対談「役割を為す」宮本慎也さん×坂田正弘

19年間所属した東京ヤクルトスワローズのみならず、日本代表チームのリーダー的存在だった宮本慎也さん。
彼はまた、「職業としての野球」に地道に取り組む一流の仕事人でもあった。
長い現役生活を終えて3年。仕事、組織、リーダーのあり方について、キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長、坂田正弘と語り合った。

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  • 2017.03.01

特別対談「役割を為す」
宮本慎也さん(野球解説者)×坂田正弘(キヤノンマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長)

「相手に話させる」ことの大切さ

写真:師と仰ぐ野村さんと宮本慎也さん 師と仰ぐ野村さんと。ヤクルトスワローズでは計5人の監督の下で戦ったが、やはりプロデビュー時から厳しい指導を受けた野村さんからの影響が最も強いと話す
© 写真:時事通信フォト
写真:坂田正弘 「10人のメンバーがいれば10個のエンジンで動く。そんな組織をつくらなければなりません」

坂田

現役時代、いろいろな監督の下で戦ってきましたよね。一番強かったのは、どの監督の頃でしたか。

宮本

やはり、野村さんの時代ですね。すごい選手がそろっていたし、緻密な野球もできていました。一番特徴的だったのは、「考える力」がチーム全体にあったことだと思います。

野村さんは、考えて野球をやるということを徹底的に僕たちに教え込みました。例えば普通の野球では、見逃し三振は絶対に駄目ですよね。でも野村さんは、「どんなボールが来るかを考えて、違うボールが来たから見逃し三振になってしまった」という場合には決して叱りませんでした。考えた上で、それがうまくいかなかったなら仕方がないということです。それが徹底していたので、個々の意識がとても高くなり、結果として強いチームになったのだと思います。

坂田

やはり、「個」の意識が重要ということですね。私もいつも言っているのですが、個が強くならないと組織は決して強くなりません。チームに10人のメンバーがいたら、10個のエンジンで組織が動くようにしなければならない。野村監督時代のヤクルトは、それができていたということなのでしょうね。

宮本

そう思います。個の力が高まったのは、やはり「厳しさ」があったからです。今はプロ野球の世界でも、「叱ると萎縮するからあまり叱るな」という雰囲気になっています。しかし、僕らは野村さんにずいぶん叱られました。さらにミスをしたらその場で叱られるので、すぐに反省して直すことができるわけです。試合後に時間をおいて叱るのとでは、効果は全然違うと思いますね。

坂田

ご自身のコミュニケーションの流儀はどのようなものでしたか。

宮本

特に若い人とのコミュニケーションでは、日常の挨拶にひと言加えるとか、相手が話しやすい雰囲気をこちらからつくってあげるとか、いろいろ工夫をしていましたね。

一つ大切だと考えていたのは、「相手に話させる」ということです。こちらから話すだけでは、どうしても「言われた通りにやる」という意識が芽生えてしまいます。しかし、自分の意見を言えば、そこに自然と責任と主体性が生まれると思うんです。

坂田

「相手に話させる」のはとても重要なことですね。営業の現場などではそれは必須のスキルです。営業の基本は「聞く」ことです。自分ばかりがしゃべっていては駄目で、聞き上手にならなくてはいけない。お客さまが何を考えていて、どんな課題を抱えているのか。本音のところはどうなのか──。そこを引き出すことができれば、おのずと何をご提案すればいいかが分かるものです。

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