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トップ > 特集 未来のカタチが見えてきた 来たる!キャッシュレス社会 > P5
社会のキャッシュレス化が世界的な流れとなっている。今後も増えてくるであろう訪日外国人観光客を見据え、日本でも対応を急いでいる。世界はなぜ急激に現金から電子決済にシフトしているのか。そこにどんなメリットやビジネスチャンスがあるのか。
キャッシュレス社会が描く未来を探る。
東京から車で2時間。年間300万人の観光客が訪れる神奈川県の湯河原温泉で、生体認証システムを使った決済システムの実証実験プロジェクトが2016年5月から進められている。これは、経済産業省「IoT推進のための新ビジネス創出基盤整備事業」の一環として行われているもの。画像解析やビッグデータ解析を用いた生体認証技術開発に取り組むLiquidがシステムを提供している。
観光客は、宿泊施設で自分の指紋をリーダーに読み取らせて本人登録を行う。その指紋情報と前払いのクーポン(電子マネー)情報をひも付けることで、買い物や飲食の際に指紋による決済ができる。それがこの実験の基本的な仕組みだ。実験に参加しているのは、宿泊施設、土産販売店、飲食店、スナック、バー、ガソリンスタンドなど。指紋はスキャンした時点で「端点」や「分岐点」といった数値データとして登録されるので、指紋の画像自体が保管されることはない。
温泉街では、宿泊施設からの外出時に財布を持ち歩くのが面倒だという声が以前からあった。また、キャッシュレス決済に慣れた外国人観光客は現金決済を嫌がる傾向がある。「ゆびクーポン」は、そういった課題を解決する観光地ならではのソリューションといえそうだ。
もちろん、指紋、顔、虹彩、声などの生体的特徴を利用した決済が有効なのは観光地にとどまらない。正確な本人確認さえできればキャッシュレスサービスが成立すると考えれば、カードもデバイスも必要としない生体認証決済が将来的には究極のキャッシュレスサービスになるのかもしれない。