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トップ > 特集 平成時代のマーケティングから次世代のヒントを探る > P3
急速に情報化が進み、消費者ニーズが多様化。平成が幕を閉じようとしている今、有識者に話を聞き、ヒット商品とITの目線で平成を振り返り、次世代につなぐヒントを探る。
平成の30年間は、インターネットの進化とともに歩んできたといえます。民間で基礎的な研究開発がスタートしたのが1986年ごろのこと。10年ほどの研究期間を経て、95年には現在のマイクロソフト社から「Windows95」が発売されました。それまで主流だった大きくて重いコンピューターが、各家庭のデスクトップコンピューターに取って変わり、通信キャリアを通じてつながったことで一気にユーザーが拡大しました。これが実質的なインターネット社会の幕開けです。
インターネットが社会にもたらした主なインフラは何かというと、研究時から構想され、後の電子商取引の礎となった「eBay」「PayPal」などのキャッシュレス決済システムが挙げられます。しかし、インターネットが起こした最大の変革は、そうしたビジネス分野だけではありません。産業構造や社会基盤にまで影響を及ぼす「デジタルトランスフォーメーション」を起こしたことでしょう。
それはつまり、デジタル情報を流通させるインフラをこの世に構築したことです。他のインフラと圧倒的に異なるのは、「物理=モノ」が介在しないため、地球上の全ての人とモノがデジタル情報を自由に流通させられるようになりました。分かりやすい例を挙げましょう。一昔前の航空チケットを思い出してください。有価証券だった航空チケットは普通郵便として送れないため、当時は特別な物流システムに乗せる必要がありました。しかし、今ではeチケットのシステムが確立し、物流コストが格段に下がったのはいうまでもありません。さらには、国境という制約も飛び越えるようになりました。国内の市場が縮小する今、グローバルな視点でマーケットを注視する上でも、インターネットは欠かせないでしょう。
そんな中、台頭してきたのが、ベンチャー企業です。彼らのビジネスのほとんどが、インターネットが築いたインフラなしには成り立つことはできませんでした。従来の物理的な製品を売買するビジネス形態から、ソフトウエアでソリューションを提供するビジネス形態へ世の中が移行しているといえます。この現象はIT業界だけにとどまりません。例えば、トヨタが車のハードウエアビジネスから、そこに組み込むソフトウエアを開発し、より消費者に車に乗るという体験を楽しんでもらう。そんなビジネスに舵を切り始めているように、今後はさらに日本の製造業にも波及していくでしょう。
他方で、SNSを通じて顧客情報をダイレクトにベンダー(売り手)側が収集できるようになった今、代理店がただ単に消費者とベンダーをつなぐ、従来型のマーケティングビジネスが立ちいかなくなってきた現状にも目を向けていくべきでしょう。
このように、ビジネスの形態そのものを変えたインターネットの一翼を担った存在として、スマートフォンの登場も欠かせません。中でも「iPhone」は、音楽シーンをはじめとするライフスタイルそのものを大きく変えました。「iPod」のようなデジタルデバイスに一生分の音楽を入れて持ち歩く時代から、スマートフォンを活用し、ストリーミングで聞くサービスへとシフトさせる。所有せず、好きな時に好きな音楽や動画を自由に楽しむことを可能にしたのです。