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トップ > 特集 特別対談「創像する力」弘兼憲史さん×坂田正弘 > P3
会社員生活を経て漫画家デビューし、40年以上第一線で活躍する弘兼憲史さん。代表作の『島耕作』シリーズは昨年、連載開始から35周年を迎えた。長年にわたり世の中に支持され続ける作品の裏には、どんな秘密があるのか。また、形のないモノ(像)を創出する上で大切な要素は何なのか。キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長 坂田正弘と熱く語り合った。
弘兼
「顧客主語」とは面白い言葉ですね。どういった意味なのでしょう。
坂田
常にお客さまを起点に考え、寄り添い、行動するという意味です。つまり、自分たちの商品を一方的に売り込もうという気持ちで臨むのではなく、お客さまの真のニーズを見つけ出し、その解決をお手伝いしていく。お客さまの競争力を高めることを支援したいという姿勢を、はっきりと伝えていってほしい、と現場にも話をしています。
弘兼
確かにこれからは技術だけで勝負する時代ではなく、そこから先の信頼性からビジネスが成り立っていく時代です。本当の意味での"ブランド力"が試されているともいえる。「同じお願いをするならキヤノンに」というパートナーシップを築き、顧客と共に発展するwin-winの関係性を目指すということですね。
坂田
はい。昔は製品の良さだけで勝負できたのですが、今はそれだけでは足りません。どういった付加価値のあるソリューションを提供していったら、お客さまが抱える課題を解決できるのか。その効果の最大化を提案する力が問われていると思います。
弘兼
となると、いかに顧客の課題を聞き出せるかという点が重要ですね。
坂田
その通りです。初対面の相手に対して「こんなことに困っているんです」と打ち明けてくれる方はなかなかいませんから、われわれはコミュニケーション力を磨く努力をしなければなりません。お客さまを取り巻く状況を理解した上で、さまざまな角度から対話を重ね、相手の本音を探る。その蓄積が、今目指すべきブランド力につながると信じています。
弘兼
ブランド力といえばふと思い出したのですが、「キヤノン」という社名は「観音」に由来しているとか。
坂田
さすが、よくご存じですね。80年以上前の創業期のメンバーの案で、観音に由来する「KWANON(カンノン)」という試作機を作ったのが当社の商品の原点なんです。ただ、当時の段階で「いずれ国外に出て行くために、グローバルに通用する名称を」という意見があり、音が近い英語の「CANON」になったという経緯があります。
弘兼
当時から海外市場を想定していたとは、先見の明があったんですね。ブランド名と会社名を一致させるという、近年のトレンドもすでに採り入れていたというのも面白い。しかしグローバル戦略は、どの企業においても喫緊の課題のようですね。日本にはこれまで1億人以上の豊かな国内市場があり、国内だけで十分に稼げる国でしたが、人口が減少する今後はそうはいかない。自動車業界などを見ても、いち早く海外戦略に打って出た企業が新しい市場を獲得していますよね。
坂田
当社の顧客対象は国内ですが、多くのお客さまにとってはグローバル戦略が重要な課題になってきています。われわれとしては、そこに目線を合わせて伴走することが大切だと感じています。