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不確実な時代だからこそ、意思を持って勝ち抜く ニューノーマル時代のストラテジー

新型コロナウイルス感染症の影響により、今後は「ニューノーマル(新常態)」と呼ばれる時代の到来が叫ばれている。さまざまなことが"不確実"とされるこの時代において、どのような戦略を立て、ビジネスチャンスをつかんでいくべきなのか。企業やビジネスパーソンがコロナ禍をポジティブに考え、勝ち抜いていくためのヒントを探る。

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  • 2020.12.01

不確実な時代だからこそ、意思を持って勝ち抜く
ニューノーマル時代のストラテジー

ケーススタディ2
ドライバーの社会的価値向上を、独自発想のソリューションで促進
CBcloud

物流という仕組みに欠かせない配送ドライバーの価値を高め、真に満足感を持って活躍できる環境づくりに向け、独自のソリューション提供を続けているのが、2013年に創業したCBcloudだ。同社の代表取締役CEOの松本隆一さんに、その取り組みと、ニューノーマル時代に向けた展望を聞いた。

ドライバーの活躍を支えるプラットフォームとシステム

松本隆一さん 松本隆一(まつもと りゅういち)
CBcloud株式会社
代表取締役CEO

CBcloudの事業は大きく二つある。一つは主に個人事業主である軽貨物ドライバーと、荷物を送りたい企業のマッチングを行う「PickGo(ピックゴー)」、そしてもう一つは、物流現場の業務と働き方を変えるDXシステム「SmaRyu(スマリュー)」だ。

「運送業を営んでいた義父から、個人ドライバーの現状や課題を聞いていました。同じ個人事業主でも、タクシーは街で乗客を見つけられますが、配送ドライバーは依頼がなければ仕事を得られず、受け身で弱い立場にありました。ドライバーは物流現場で不可欠な存在であるにもかかわらず、日本ではなかなか評価されていない。この現状を変え、ドライバーの価値向上を実現するために、『PickGo』というプラットフォームを構築しました」

松本隆一さんが掲げる"ドライバーファースト"の想いが共鳴し、登録ドライバーは2020年7月時点で2万人を突破。「PickGo」は多くの大手企業からも注目され、物流の一大インフラとして存在感を高め始めている。

一方の「SmaRyu」は、作業がアナログで属人化しやすい物流の現場において、クラウドの活用によるDXを実践し、生産性向上に寄与しようとするシステムである。

「私もドライバー経験をする中で、アナログ的な環境を実感していました。そんな状況で仕事を受け続けても、ドライバーの価値向上にはつながらない。まずは環境から変えるべきだと考えスタートしたのが『SmaRyu』です」

「SmaRyu」には、配送ルートや荷積みの提案、誤配防止など、新人でも早く正確に業務が遂行できる宅配現場向けの「SmaRyu Post」と、配車管理や請求書発行までクラウド上で可能にし、運送業者の業務効率化に貢献する「SmaRyu Truck」の二つのソリューションが用意されている。前者は20年6月に、日本郵便に導入されたことでも話題になった。

画像:PickGo

荷物を届けたい企業と、個人ドライバーをマッチングする「PickGo」。従来は荷主からの依頼を待たざるを得ない弱い立場にあったドライバーに、新たな活躍の場を提供するプラットフォームで、登録ドライバーは2万人を超える。2020年2月からは、大型車両や特殊車両などの一般貨物車両のマッチングも開始。7月時点で1万台がマッチング可能となっている

画像:SmaRyu PostとSmaRyu Truckのロゴ

運送現場のスマートな働き方の実現をサポートする「SmaRyu」。「SmaRyu Post」では、荷物の情報を基に、最適な配送ルートや荷積み位置を提案するほか、荷物の照合により誤配を防ぐなど、新人でも熟練ドライバーのように業務が遂行できる。「SmaRyu Truck」では、紙や電話中心の運送会社での事務作業をデジタル化。あらゆるデータを一元管理できる

コロナ禍でのニーズに応じ、新たなサービスもスタート

さらに、今回のコロナ禍に際して、「PickGo」の登録ドライバーが配送業務のスキマ時間に、消費者の代わりに買い物をして商品を届ける新サービス「PickGo 買い物」もスタートさせた。

「ドライバーの社会的価値を上げるには、三つの要素が必要です。まずは、適正な待遇の仕事を提供することと、その生産性を上げること。この二つは、『PickGo』と『SmaRyu』で達成しました。そして最後の一つが、モノを運ぶ以外の価値をつくり出すことです。ドライバーがスキルの幅を広げることが、ドライバー自身の価値向上にもつながると、以前から考えていました。そこに新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、配送以外に消費者の代わりに買い物をする需要も生まれたと感じ、当初の計画を前倒しして『PickGo 買い物』を始めたのです」

コロナ禍の状況においては、物流の需要拡大で「PickGo」のプラットフォームが活用され、登録ドライバーも月1.5倍のペースで増えるという大きなプラスの影響があったという。

「以前は、物は届けられることが当たり前だったと思います。ところがステイホームで外出がままならず、宅配利用が急激に増えると、"ドライバーさん、ありがとう"という風潮が生まれました。この短期間で、ドライバーの社会的地位も若干改善されたと感じています」

ドライバーの価値向上へ、ラストワンマイルでの施策も

登録ドライバーが増えサービスも拡充したことで、「PickGo スコア」という新たな仕組みも構築した。運送の正確性やサービス満足度など、評価の高いドライバーがより多くの仕事を得られるようにするための制度で、この9月から運用を開始している。

「ドライバーの増加でインフラとしての『PickGo』が強化され、対応エリアが拡大し、密度が上がれば、より多くの企業に活用を促せるようになります。また、コロナ禍を契機に、中小の運送業者でもDXへの意識が高まっており、『SmaRyu』のソリューションがドライバーはもちろん、運送業者の価値向上にも貢献できると期待しています」

事業環境が大きく変化する中、CBcloudは今後"変わらないところ"と"変えるべきところ"をどう考え、歩んでいくのか。

「創業の精神である、『ドライバーの価値を上げていく』という想いは全く変わりません。だからこそ、仕事を多く供給するためだけに安請け合いはしません。お金だけでなく現場の労働環境をさらに改善し、ドライバーが満足感を持って働ける社会をつくる努力を続けたいですね。ただ、この先はインターネット通販の自宅・コンビニ配送や、フードデリバリーといったラストワンマイルの需要拡大が予想されます。これまでは、配送単価の低さから意識的に避けてきましたが、こうした領域でも、安請け合いをせずに、当社のインフラ価値の提供方法を検討する必要があります。大きな意思決定を伴うものですが、ドライバーの社会的な地位と価値を真に上げるためにも、ニューノーマル時代に向け、ニーズに対して柔軟に対応していくべきことだと考えています」

画像:「PickGo 買い物」サービスの画面

食料品、日用品をはじめさまざまな商品を注文すると、「PickGo」の登録ドライバーが買い物を代行し、最短30分で届けるサービスが「PickGo 買い物」。個人ドライバーに配送以外のスキルも身に付ける機会を創出し、利用者への利便性に加え、ドライバーの社会的価値向上にも貢献

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    新しい施策を次々と打ち出し、
    今までにない店舗の形を実現
    「メガネスーパー」
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    コロナ禍以前から貫き通す
    経営スタンスを継続する
    「西松屋チェーン」

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