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トップ > ITのチカラ [Vol.2] 医療業界向け3Dソリューション > P2
さまざまな業界で活用が進んでいる3Dデータや3Dプリンター。従来は製造業界からの注目が特に高かったが、近年は医療業界での導入も進んでいる。キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループ各社の担当者が、医療分野における3Dソリューションについて解説する。
――医療分野で、3Dデータはどのように活用されているのでしょうか。
AZE 熊野泰大
CTやMRIで撮影された3Dデータは、病変の発見だけでなく、治療方針の決定にも活用されています。外科的な処置と内科的な処置のどちらが適切かの判断や、外科的な処置を行う場合の手術の方法などを検討する際、3D画像は有力な判断材料の一つです。
――3Dデータ利用のためには、どのようなハードウエアやソフトウエアが必要なのでしょうか。
キヤノンライフケアソリューションズ(以下、キヤノンLCS) 後藤秀基
撮影を行うCTやMRIが入力装置となります。これらの撮影データの画像解析や編集などの処理を行うためには、3Dワークステーションが必要です。3Dワークステーションで処理することにより、撮影データを3Dプリンターで出力することが可能になります。
熊野
10年ほど前までは、データの大きな3Dデータを扱うには非常に高い処理能力を持つ高価なワークステーションが必要でした。しかし昨今はパソコンの性能が向上しており、多くの病院で問題なく稼働させることができます。
後藤
14年にキヤノンMJグループ入りしたAZE社の3D医用画像解析ワークステーションは、単独で利用するタイプとサーバーを利用するタイプがあり、運用に合わせたご提案が可能です。
――3Dプリンターの医療での具体的な活用事例や、今後考えられる用途を教えてください。
後藤
活用事例としては、手術の前に3Dプリンターで患者さまの骨のモデルを作成し、それをもとに準備を行うケースが増えています。例えば、病気に侵された顎の骨を切除する場合、切除した部分を立体的なプレートで固定します。通常は手術の最中に少しずつプレートを曲げながら調整をするのですが、3Dプリンターを利用すれば事前に骨のモデルを作成し、それに合わせてプレートを曲げておくことができるので、手術中は微調整で済み、手術時間が短縮できます。出血量も抑えられ、手術後の回復も早くなることが期待できます。
手術の練習でも3Dプリンターが使われます。手術の方法は近年大きく進化しており、従来は切開していた手術が、内視鏡手術やロボットによる手術が行われるようになってきています。医師は臓器を直接見ず、画面を見ながら手術するわけです。患者さまの骨を3Dプリンターで出力すれば、どこにボルトを入れるか、どう整形していくかを確認して術前に検討ができます。医師の経験や練習の不足を補うことができるわけです。
将来的な用途として注目されているのは、実際に体内に入れられる骨接合用材料や人工関節などです。現在は実現には至ってはいませんが研究は進んでいます。
3Dソリューションの導入によって、モニター上の3D画像よりも立体的な位置関係を含めた検討が可能になり、高度な手術を行う医療施設で役に立つ
手術方法の進化により、内視鏡手術やロボット手術など医師が臓器を直接見ない手術が増加。一方で、事前の経験や練習の不足も課題となっている。3Dソリューションの導入には、3Dプリンターで出力したモデルで術前の検討や手術の練習、患者への説明などが行えるメリットがある