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トップ > ITのチカラ [Vol.4] e文書対応ソリューション > インタビュー
法改正により国税関係の書類をスキャンして保存するための要件が緩和されたことを受け、「e文書対応ソリューション」が注目を集めている。キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループが提供するソリューションについて、グループ各社の担当者が解説する。
今回のポイント
インタビュー
帳簿などの国税関係書類を電子化するには、法律の順守や安全性の確保といった観点から導入するシステムなどを検討する必要がある。国税庁で情報技術専門官として電子帳簿保存法を担当した経験があり、企業のe文書対応にも詳しいSKJ総合税理士事務所所長の税理士・袖山喜久造さんに、電子化を進める際に押さえておくべきポイントを聞いた。
――企業が国税関係帳簿書類をデータ保存、スキャナー保存する際、留意すべきポイントを教えてください。
電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類を電子化して保存するにはあらかじめ税務署長に申請して承認を得ることが求められています。しかし実際には、承認を得ないまま電子化を進めてしまっている企業が少なくないようです。現在、日本で登記されている会社は約300万ありますが、電子帳簿保存の承認件数は約13万3000件にすぎません。まず、電子化には法律を順守した運用が求められることを認識する必要があるでしょう。
特に書類のスキャナー保存は、電子化の承認を得ればデータが「原本」となり、紙の書類を保存していてもそれは原本とはなりません。そのため、運用において法律の要件を満たしたデータを正しく入力・保存することが非常に重要です。
――データの入力や保存において、特に注意が必要なのはどんな点でしょうか。
データ入力については、入力期限に注意が必要です。例えば領収書などの重要書類は、受領者本人がスキャナーで読み取った場合は3日以内に、受領者以外が入力する場合は1カ月と1週間以内にタイムスタンプを付けることが求められます。このルール通り入力されていない場合は紙の書類も保存しなくてはならないため、二重の手間が生じてしまいます。
保存に関しては、データが常に見られる状態になっている必要があります。暗号化してアーカイブしているデータなどは、速やかに出力されなければ保存されていないものと見なされますから、注意が必要です。法人には原則として7年間の帳票書類の保存が義務付けられています。つまり、7年にわたりサーバー上で常に電子化したデータを見られるようにしておかなければならないということです。
――文書を電子化するシステムを選定する際は、どんな点を重視すべきでしょうか。
帳簿のデータや契約書の内容といった会計情報は、企業の機密情報です。万が一こうした情報が漏えいすれば、経営上のダメージは非常に大きなものになります。ですから電子化されたデータを保存するサーバーは、強固なセキュリティーで守られていることが必須です。
7年間データが見られる状態を維持できるかどうかも、慎重に見極める必要があります。電子帳簿保存法改正で書類の電子化への関心が高まっていることを受け、比較的安価なクラウドサービスなども登場していますが、費用や仕様に加えて「7年後もそのサービスが提供され続けているか」という視点でチェックすることも大切でしょう。
さらに言えば、サーバーがどの国・地域に設置されているかも検討する必要があります。クラウドサービスでは、国際情勢の変化によって回線が遮断されてデータにアクセスできなくなるリスクもゼロではありません。
このような観点から、私は信頼できる国内事業者のサービスを利用するよう推奨しています。多少、運営コストが高かったとしても、信頼性・安全性には換えられないと考えています。
――システムの要件はもちろん、サービス提供事業者の信頼性にも目を向ける必要があるということですね。
加えて、事業者はスキャンやデータ保存、タイムスタンプなどの機能を提供するだけでなく、法律を順守した運用をサポートすることも求められるでしょう。書類の電子化には税務署での適正な手続きなども必要ですから、コンサルティングも含めた総合的なソリューションを提供できる事業者と一緒に取り組むことを勧めます。