人を呼び込むポスター活用術 ~ポスターでビジネスを生かすヒント~

エキスパートに聞く ポスター活用のポイント Vol.1

「非計画購買を意識した店づくりが、売り上げアップと消費者の満足につながる」株式会社マクロミル ネットリサーチ総合研究所 主席研究員 上田雅夫さん

消費者が店頭でPOPやポスターを見て商品を購入する。その行動の中で、POPやポスターはどのような効果があるのでしょうか。またどのような観点で情報を盛り込めばいいのでしょうか。店頭における消費者の態度、行動について研究しているマクロミル ネットリサーチ総合研究所の上田 雅夫氏に伺いました。

日本では、店頭における非計画購買の比率が高い

日本人の消費行動の特徴は、店頭における非計画購買の比率が高いことです。非計画購買とは「意図を持たずに購買する行動」で、スーパーやコンビニでは特に高く、店頭における聞き取り調査の結果、約3/4を非計画購買が占めます。

ただ「非計画購買=衝動買い」ではなく、意図がないわけではありません。買い物リスト(計画購買)のような明確なものはなくても、例えば「今晩のおかずを買おう」とか「明日のお弁当のおかずを買おう」というようなあいまいな目的は持っているものです。何らかのあいまいな目的を持って店舗に行き、商品を見ているうちに具体的な商品を購買する意図が生まれます。それが非計画購買です。

消費者の目的に合った刺激、情報提供が非計画購買を促す

非計画購買の比率が高いわけですから、それを促す施策は店舗の売上を左右することになるでしょう。では、具体的には何をすると、非計画購買が促されるのでしょうか?

消費者が購入商品を決めるには情報が必要です。ところが店頭には意外なほど情報がありません。多くの商品は、「パッケージに記載された情報」と「販売価格」しかわからないのです。例えばチーズ売り場に行っても、どれが「赤ワインに合うチーズ」「サラダに合うチーズ」といった情報を消費者が見つけることはできません。

非計画購買を促進するには、「消費者が購入を決断するための情報」を提供して、刺激を与えることです。それはPOPやボード、ポスター、あるいは店員の掛け声かもしれません。それらの情報が、消費者の持っていた目的と合致したとき、非計画購買が促されます。「今晩のおかずを買う」という目的で来店した消費者に、「この前、お刺身を出したら家族が喜んだ」と想起させられたら、「今日は、旬のお刺身にしよう」と購買意欲が高まるでしょう。

店舗側から見ると、過度な情報提供は「消費者に対する押し付けに思われないか」と心配されるかもしれません。しかし、現実に店頭には情報が十分ではない場合が多く、消費者は買い物の際、迷っているのです。消費者は店舗側から気づきを与えられることに期待しているのです。

来店客の傾向を知る現場スタッフの考えを活かした情報を

提供する情報は、季節や地域、状況によって変えなくてはいけません。例えば、全国どこでも同じようなものを扱っていると思われがちなコンビニも、実は店舗によって品ぞろえが違います。スーパーが少ないエリアでは日用雑貨などの比率が高くなり、ビジネス街ではオフィス向けの商品が品ぞろえされます。それらの違いが店頭において提供する情報に影響してきます。

まずは「店内で不足している情報」を見つけ、自分の店舗に来店しているターゲットに合わせて「どう提供するか」を考えましょう。この違いに対応するには、来店客についてもっとも情報を持っている現場スタッフの考えも重要になります。チェーン店であっても、店舗のスタッフがPOPやポスター、ボードをつくる意味もそこにあります。

非計画購買は、買い物の楽しさにつながる

私は「非計画購買を促すことで買い物はより楽しくなる」という仮説を持っています。

計画購買の場合、「あの商品を買おう」「これが無くなったから補充しておこう」と最初から決まっています。ところが非計画購買は、「家族を喜ばせたい」「来客を楽しませたい」などの目的があって、その具体的なプランを店頭で商品を見ながら想像を巡らすことになります。

そのような購買行動は、消費者にとってクリエイティビティがあり、楽しい行為になるのではないでしょうか。非計画購買を促す施策は、店舗、消費者、双方にメリットを生むと思われます。

顧客主義という言葉があります。私は価格を下げることだけが顧客主義とは考えていません。むしろ、ひとりひとりの消費者が自分に必要な商品を選びやすくすることが「本当の顧客主義」ではないでしょうか。商品選択のために参考になる情報を提供することもそのひとつ。効果のある情報提供は、消費者にとっても価値の創造につながり、店舗経営にとっても有益なことと考えています。

* 非計画購買を促す ポイント *

  • 消費者が「購入決断(選択)するための情報」を店頭に
  • 客層や地域、季節や状況によって、提供する情報を変えていく
  • 売り場と顧客を一番知っている現場スタッフの考えを活用する

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