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トップ > Cのキセキ Episode.33 「インスペクション EYE for インフラ」 > P3
培った技術を活用し社会課題を解決する。そうした考え方の元、キヤノンは新たな事業の創出に取り組んでいる。その一つに「インフラ構造物点検」の分野がある。全く新しい事業領域へ、キヤノンはどう挑んでいるのだろうか。
「インスペクション EYE for インフラ」は、「撮影サービス」「画像処理サービス」「変状検知サービス」で構成される。武田が概要を説明する。
「『撮影サービス』は、コンクリートの状態を細かく確認できるように、部分ごとに高精細な画像を分割撮影するものです。大きな橋梁やトンネルでは数百枚に分けて撮影することもあります。人が近づくのが難しい高所や崖地のような場所では、ドローンでの撮影も行います」
「画像処理サービス」では、撮影した画像を点検に適した形に加工・処理する。
「分割して撮影した画像をつなぎ合わせ、図面と重ねられるように処理するサービスです。正面から撮影できない場合でも、あおり補正などの変形処理を加えて正面から撮影したように加工もできますし、角度を変え撮影した複数枚の画像を組み合わせ、柱や鉄骨などの遮蔽物を取り除いた画像にすることも可能です」
最後の「変状検知サービス」は、インフラ構造物点検の中でも難易度の高いひび割れの確認を容易にするものだ。
「撮影した画像の中からAIがひび割れを見つけ出して色付けし、ひと目で分かるようにします。その際にひび割れを幅ごとに分類するため、補修材の量を推し測る基準となる0.2ミリ以上の太いひび割れがどの程度あるのかといった情報を容易にチェックできます」
「変状検知サービス」の結果は、広い面積にあるひび割れの位置と幅を示すことで、点検に要する時間を大幅に削減する。
実際に、あるケースにおいて、変状検知の処理前の画像で点検を行った場合と検知結果を反映した画像で点検を行った場合とを比較したところ、前者では720分かかっていた作業が後者では90分に、つまり8分の1まで短縮できたという。
「インスペクション EYE for インフラ」のサービス構成
画像ベースインフラ構造物点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」は、近接目視点検に代わるインフラ構造物の点検手段としてキヤノンとキヤノンMJが東設土木コンサルタントとの共同研究を通じて開発したサービス。地方公共団体や点検業務を請け負う建設コンサルタントが主な顧客となる。「撮影サービス」「画像処理サービス」「変状検知サービス」の3つのサービスで構成され、どのプロセスからでも利用できる。
レンズ交換式カメラやドローンを活用した「撮影サービス」
高所や河川の上などを撮影することの多い「インスペクション EYE for インフラ」の「撮影サービス」では、高画素タイプのレンズ交換式カメラと望遠レンズを組み合わせ離れた場所から撮影する場合や、カメラ付きのドローンを使って撮影を行う場合がある。なお、カメラと望遠レンズで複数枚撮影する際には自動雲台を利用して正確な分割撮影を行う。ドローンを活用する場合は、インターバル撮影機能を利用して本体を移動させながら撮影することで効率化を図っている。
検知の精度を向上させる「画像処理サービス」
「画像処理サービス」では、分割して撮影した写真をつなぎ合わせ、1枚の高解像度画像を作成する「スティッチ」、撮影時の歪みを補正し、変形処理をして図面と正対させる「あおり補正」、複数の方向から撮影した画像を合成することで、点検面を遮蔽する物体を除去する「遮蔽物除去」といった処理を行う。こうした処理を行うことでひび割れを分かりやすくし、検知や評価の精度を高める。
99.5%の高い検知率を実現
インフラ構造物の画像(左)から「インスペクション EYE for インフラ」の「変状検知サービス」を使ってひび割れを検知した結果(右)。ヘアークラックと呼ばれる、幅0.05mm未満のひび割れまで検知でき、さらにひび割れの幅ごとに分類して検知結果を提示する。このように画像を使って点検作業を行うことで、短時間かつ精度の高い結果を記録でき、蓄積していくことで経年変化の確認も容易になる。