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トップ > Cのキセキ Episode.34 「EOS R3」 > P4
カメラファンの間で大きな反響を呼んでいるのが、新たなミラーレスカメラ「EOS R3」だ。開発発表されてからおよそ7カ月、2021年11月に発売されたR3は、プロフォトグラファーやハイアマチュアに向けたカメラであるにも関わらず、広くカメラファンの注目を集めている。なぜこのカメラはそんなにも人を惹きつけるのだろうか。その理由に迫る。
「EOS R3」には「視線入力」機能も搭載された。開発を担当した山本英明もまた、これまでにないカメラの実現に強い思いでチャレンジしたという。
「ユーザーからの声は開発者にも届いていますので、フィルムカメラの『EOS-3』などに搭載されていた『視線入力』に対する要望が絶えず寄せられていることは知っていました。そうした声に期待以上の形で応えたいと考えていました」
「視線入力」とは、ファインダーをのぞく撮影者の瞳の動きから視線を検出し、その位置に測距点を移動する機能。その仕組みを山本が説明する。
「ファインダー内部に設置したLEDライトから投射された赤外光の反射を、液晶ビューファインダーの横に配置された専用センサーを使って読み取り、角膜の位置を分析することで視線がどこに向かっているのかを判断します」
メガネの有無などの個人差についてはどう対処しているのだろうか。
「確かにメガネをかけると赤外光の反射の仕方が変わるだけでなく、目の位置がファインダーから遠くなります。そこで専用のLEDを配置し、画像処理の仕方を調整して対応しています」
山本はこうした課題の解決のために、人の目についての知見を蓄えたと話す。
「論文や医学書に目を通すだけでなく、キヤノンの医療部門で眼科機器の開発に携わる研究者ともコミュニケーションを取りました。その結果、十分に実用的な機能になったと自負しています。新しいユーザーにはもちろん、かつて『EOS-3』などで視線入力を使っていた方にも試してもらいたいと思っています」
こうした技術者のチャレンジは、「EOS R3」が搭載する機能の数だけ存在する。そうした中でももう一つ注目しておきたいのが、高速データ通信や電源供給が可能になった新開発のマルチアクセサリーシューだ。開発チーフの清田は、これからのカメラの新しい使い方を想定して採用したと話す。
「動画撮影の際、アクセサリーシューにライトやマイク、通信機器などを装着するケースが増えています。そこで、コネクタータイプの接点部を採用し、高速データ通信や電源供給などの機能拡張に対応しました。高音質マイクを使った収録や、5Gネットワークを使った動画の配信といった場面でより便利になります」
今後はこの新しいアクセサリーシューを活用した新たな提案も行っていくという。このマルチアクセサリーシューもまた、「EOS R3」が新しい発想で作られていることを示している。
待ち望まれてきた「視線入力」搭載で見つめた先にピントが合う「EOS R3」が採用する新しいAF機能の一つが、撮影者の視線を検出して視線の位置にAFフレーム/AFエリアを移動する「視線入力」。ファインダー内から投射した赤外光の反射を、専用センサーで読み取ることで視線の位置をリアルタイムで正確に検知する。スポーツ分野など、複数の被写体に対して素早くピントを切り替えるといったケースで有効だ。
拡張性に富んだ高機能インターフェースで多様な撮影を可能にする「マルチアクセサリーシュー」
「EOS R3」で初めて搭載されたシステム拡張が可能なマルチアクセサリーシュー。従来のアクセサリーが使えるのに加え、新たなコネクタータイプの接点部を採用したことで、高速データ通信や電源供給などの機能拡張が可能になっている。スピードライトトランスミッターや指向性ステレオマイクロホン(2022年春発売予定)に加え、5G回線の活用も視野に入れたスマートフォンリンクアダプターも用意される。