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Cのキセキ

キヤノンのフラッグシップにして、プロフェッショナルモデルのデジタル一眼レフカメラ「EOS-1D X Mark II」が4月28日に発売された。コンシューマー向けのカメラとは違う、「フラッグシップ」はどんな視点で選ばれ、どう使われるのか。その開発と販売、サポートの現場に話を聞いた。

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  • 2016.06.01

Episode.13 「EOS-1D X Mark II」

信頼とは積み重ねで得られるもの

「EOS-1D X Mark II」を、プロの過酷な環境でも“使える”カメラにするための機能の一つひとつが、さまざまな制約を乗り越え技術者の工夫や努力によって実現したものだ。

「EOS-1D X Mark II」と「EOS-1D X」はほぼ同じサイズだ。だが、新しいハードウエアや機能を搭載するためのスペースを確保し、配線をして電気を流し、同時に発生する熱を外部へ逃がす。それらすべてを最善のバランスで実現した上で同じサイズになっていることを考えると、そこに至るまでの工夫や努力の数が膨大なことが分かる。

そんな工夫や努力の積み重ねによって実現した機能の一つが、焦点や露出を合わせながら秒間約14コマの「高速連続撮影」だ。松本は言う。

「連写機能の高速化にはクリアしなければならない条件が多いのです。ミラーが高速で動いていても焦点や露出はきっちりと合わなければいけない。画像処理やデータの保存もより高速にしなければならない。これらを全てクリアして初めて秒間約14コマが実現できるのです」

高速連続撮影に対応した新開発のシャッターユニットや高速な画像処理を可能にした「デュアルDIGIC 6+」を搭載したというが、中でも重要だったのが振動の処理だったという。

「秒間最高約12コマの『EOS-1D X』は、ミラーをバネで動かす仕組みです。開発初期にその仕組みのまま14コマで動作させてみたところ、机の上でカメラが飛び跳ねるほどの振動が発生してしまいました。そこでミラーをモーターで動かす仕組みに変え、上がり切る直前、下がり切る直前にブレーキをかける仕組みを組み込んで振動を抑えました。カタログ上はたった2コマの向上ですが、ミラー駆動機構はまったくの別物になっています」

さらに、これだけでは“使える秒間14コマ”にはならなかった。その理由は、撮影時にミラーが上がることでファインダーの中がブラックアウトする一眼レフカメラ特有の構造にある。連続撮影の速度が増えれば、このブラックアウトの時間は長くなる。

「ブラックアウトの間は被写体が確認できないわけです。わずかな差ではあるのですが、プロの使用には耐えられないと判断しました。そこで、ミラーが動いている時間を短くするためにほかの動作や処理を高速化することでブラックアウトの時間を短くし、『EOS-1D X』と同等にしました」

“たった2コマ”だが、フィギュアスケートのスピンや野球でバッターがボールにミートする瞬間など、被写体が高速で動く競技を撮影するプロからは大きな反響があるという。

「『12コマで十分』とおっしゃっていたフォトグラファーでも、いざ使っていただいたら『これまで逃していた瞬間が撮れる』と目の色が変わり、『もう戻れない』とまで言っていただけました」

ユーザーの声に応えるだけでなく、先回りして実現していく。プロフォトグラファーの信頼はこうして少しずつ、獲得していくものなのだ。

「EOS-1D X Mark II」に搭載された4K/60Pでのムービー撮影機能もそんな“先回り”だ。フルHDを超える画質でありながら焦点や露出はスチル撮影時の機能がそのまま使えるとあって、映像のプロからも大きな関心が寄せられている。

「最近はスチルだけでなくムービーの撮影も行うプロフォトグラファーも増えていると聞きます。そういった領域にもアピールしていく画期的な機能になったと思います」

画像:デュアルDIGIC 6+ デュアルDIGIC 6+
ファインダー撮影時最高約14コマ/秒、ライブビュー撮影時最高約16コマ/秒で連続撮影したデータの高速処理や高感度画質を実現するために、新開発の映像エンジン「DIGIC 6+」を2基搭載。さらにCMOSセンサーの高速読み出しに対応するフロントエンドICやカメラ内デジタルレンズオプティマイザ処理を行うためのチップも搭載している
画像:新開発35mmフルサイズCMOSセンサー 新開発35mmフルサイズCMOSセンサー
「EOS-1D X Mark II」のために新たに開発された約2020万画素35mmフルサイズCMOSセンサーによって高感度画質やダイナミックレンジが拡大し、実用感度域における高画質化も実現している。データの読み出し速度も高速化したことで、高速連続撮影や4K動画の撮影なども可能になった

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