カテゴリーを選択
トップ > Cのキセキ Episode.23 「EOS R SYSTEM」 > P2
キヤノンから新たなイメージングシステムが登場した。それが「EOS Rシステム」だ。開発コンセプトである「Reimagine optical excellence」から取られた「R」の文字には、イメージングの世界を再構築するという、キヤノンの強い決意が込められている。その核心はどこにあるのか。「EOS Rシステム」の開発者たちに話を聞いた。
「そこで、『EFシステム』を超える新たなイメージングシステムを作る。それを目標にしたのです」
戸倉ら、開発部門のリーダーたちが掲げたこの目標を聞き、技術者たちだけでなく、生産現場のスタッフまでが新しい挑戦に目の色が変わったという。
キヤノンは、1936年に国産初の高級35ミリカメラ「ハンザキヤノン」を発売してその歴史をスタートさせ、その後も技術革新を続けてきた。中でも87年に発表した「EOSシステム」は、完全電子マウントにレンズ内モーター駆動を備えた革新的なものだった。その「EOS」シリーズを支えてきた「EFシステム」を超える。キヤノンでカメラに携わる者にとって、これほど重い責任とやりがいを感じる目標はないだろう。
「EFシステム」においてカメラ本体とレンズを嵌合(かんごう)する「EFマウント」は、オートフォーカス(以下、AF)やレンズの絞りに関する情報、それらを動かす電力の伝達を担うマウント通信システムの一部でもあり、カメラの性能や操作性を左右する重要な要素になっている。
「EFシステム」はそうした情報や動力の伝達を完全電子化したことで、素早いAFや、カメラ本体側からレンズの設定を変更するといった機能を、他社に先駆けて採り入れることができた。
キヤノンの光学開発部門を率いる日比哲史は、「EFシステム」は「現在でも十分に通用するシステム」だと話す。
「時代がフィルムからデジタルへと大きく変わっても、最新のレンズで高画質な写真を撮影したり、レンズ内手ブレ補正機構が利用したりできるのは、『EFシステム』の仕様が優れているからに他なりません。だからこそ、それを超えるという目標は、技術や生産の現場に立つスタッフたちの心を揺さぶったのです」
カメラ側の開発部門を率いる海原昇二もその目標に胸を熱くした一人だ。
「新システムを開発するにあたり、『EFシステム』を開発した先輩たちはどんなことを検討したのだろうと、議事録などの古い資料を読みました。そこには、実に広い視野と驚くほどの熱意で開発に望んでいた様子がつづられていました。私たちも30年先の技術者たちを驚かせるような仕事をしなければいけないと、身が引き締まる思いでした」
しかし、30年先にカメラやレンズがどう使われるかを、どのように想像したのだろうか。戸倉はこう話す。
「30年後の具体的な機能やニーズの正解は知りようがありません。それでも未来の姿を徹底的に想像し、新しいシステムを構築してほしいとメンバーたちには言ってきました。それに、"根幹の部分"は変わらないという確信もあります。それは、写真や映像の美しさに感動する人の心や、撮影する際の快適な操作性です。新しいシステムは、その部分を徹底的に追求したものにしました」
キヤノンの技術者たちのそうした未来に向けた強い想いとともに世に送り出されたのが、「EOS Rシステム」なのだ。
ユーザーの撮影体験を刷新する新しい操作方法を採用
レンズ側に「コントロールリング」、カメラ側には「マルチファンクションバー」という、新たな操作系が採用された。それぞれ、自分の撮影スタイルに合わせた機能や設定の割り当てなど、カスタマイズが可能となっている。