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トップ > 特集 オムニチャネル最前線 > ケーススタディー3
この2年ほどの間に、「オムニチャネル」という言葉が新聞や雑誌などでしばしば取り上げられるようになった。
直訳すれば「全ての顧客接点」といった意味の言葉だが、その本質は必ずしも広く共有されているわけではない。
オムニチャネルとは何か。なぜ今必要とされているのか──。いくつかの事例を取り上げながら、その現状と可能性を掘り下げていく。
業種の異なる店舗やサービスで利用できる共通ポイント。その市場に楽天が「楽天ポイントカード」(当時の名称は「Rポイントカード」)で参入したのは、2014年10月のことだ。「Tカード」と「Pontaカード」という先行サービスに対する後発の挑戦だったが、同社のポイント戦略は、実は10年以上前にスタートしていた。
楽天市場のポイントとして始まった「楽天スーパーポイント」を「楽天市場」「楽天トラベル」「楽天証券」といったあらゆるサービスチャネルをつなぐツールとして同社が活用し始めたのが、2002年ごろ。さまざまなサービスのポイントを共通化することによって、ユーザーにチャネル間を行き来してもらうことが狙いだった。ポイントはチャネル同士を結び付けるコネクターであり、チャネル間の流動性を高める潤滑油のような役割を果たす──。そんな考え方が当時から楽天にはあったということだ。その考え方の射程を広げ、グループ内外のチャネルを一気につないでいこうというのが、「楽天ポイントカード」のコンセプトである。
このポイントシステムが画期的なのは、3年前に同社が買収した電子マネー「楽天Edy」やクレジットカード「楽天カード」と徹底した連携を図っている点にある。「楽天市場」や「楽天ポイントカード」提携店での買い物だけでなく、「楽天カード」で決済をするたびにポイントが蓄積する。そうしてたまったポイントは、「楽天Edy」に交換して電子マネーとして利用することができる。全国の「楽天Edy」加盟店を含めると、ポイントが使える店舗は実に52万店舗に上るという。「最もたまって、最も使えるポイントといっていいと思います」。同社執行役員の中村晃一さんはそう胸を張る。
もう一点、「楽天ポイントカード」が他の共通ポイントと異なるのは、提携先を一業種一社に絞っていない点である。
「カードを使えるチャネルが同業種の中にもたくさんあり、お客さまがその都度選択できる。そのような仕組みが最も理にかなっていると私たちは考えました」
サービスをオムニ化し、カードをオムニ化し、提携先をオムニ化する。それによってユーザーの利便性を最大化しようとする思想がここにはある。
1997年の創業以来、楽天はインターネットが持つ破壊的な力を最も巧みに活用してきた企業の一つだが、現在の同社に「ネット対リアル」という発想はない。
「スマートフォンなどによって人々は常時ネットにつながっているわけですから、ネットとリアルを別の世界と捉えることには意味がなくなっていると思います。ネット店舗とリアル店舗を往還しながら、商品やサービスを自由に購入できること。それが、ユーザーが最も求めていることなのではないでしょうか」
ポイントの仕組みが、そのシームレスな往還を促進させている。