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人とテクノロジーが支え合う AIが活躍する時代

社会や産業のさまざまな分野でAI(人工知能)の本格的な活用が進んでいる。この画期的なテクノロジーへの期待が高まる一方、危惧の念も依然しばしばささやかれる。
AIによって何が可能になるのか。AIの進化が進んだ後も人間固有の営みとして残っていくものは何なのか──。AIの最前線で活躍するキーパーソンとAI実用の最新事例の取材を通じて、AIが持つ力の本質を探る!

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  • 2017.06.01

人とテクノロジーが支え合う
AIが活躍する時代

AIが活躍する場

人の仕事をサポートし、生産性を高めるツールとしてのAIの働きが、社会のさまざまな領域に広がっている。
農業とメディアにおけるAI活用の最新事例を見ながら、「人と協働するAI」の可能性を探る。

ケーススタディー2日本経済新聞社

AIが企業の決算原稿を自動的に作成。人手を一切掛けない「記事」の即時配信が実現した

過去のデータからAIが代筆記者は付加価値に集中する

上場企業が発表する決算データを基に、売り上げや利益、背景などをまとめた記事をAIが数分で自動的に作成。それを人によるチェックや修正を一切介せず即時配信する──。日本経済新聞社は、「完全自動決算サマリー」と呼ばれるこの画期的な取り組みを今年1月からスタートさせた。上場企業は約3600社あり、決算発表は集中日で1日あたり300社を超える。記者がこの全てを執筆し、「即時」に配信することは難しいが、AIを使えば「即時」に「網羅的」な決算報道が可能となる。

しかし、本当にAIに「記事が書ける」のだろうか。配信されている記事を見ると、きれいに整った文章がある一方で、必ずしも読みやすいとはいえない文章もある。それでも実用化に踏み切ったのは、「最低限の情報がまとめられていればいい」という割り切りがあるからだ。

現時点でAIにプロの記者と同じ水準の文章を書く力はないが、数字や事実をまとめたシンプルな文章を作成することはできる。従来記者が書いていたそのような記事をAIに任せ、空いた時間を取材活動に割いたり、精緻な分析が必要な記事の執筆に充てたりする。そうすることで、読者にとってより有用な記事を提供することができるようになる。それがこの取り組みの意義である。

一方、同社が持つ「過去の膨大な情報の活用」といった点でもAIが活躍している。これまでも「日経テレコン」などの情報提供サービスを展開してきたが、そこにAIを組み合わせて付加価値を高めたのが「日経DeepOcean」だ。例えば、「東京五輪に関連する株の銘柄は?」という質問を入力すると、AIが銘柄をリストアップしてくれる。他にも、過去のマーケットの相関関係を分析し将来の動きを推測したり、値動きした理由を回答したりするなど、金融・経済に強みのある本格的な自動応答システムになっている。

AIを駆使し、新聞社が保有する膨大かつ信頼性の高い情報から新しい価値を生み出していく──。そんな先駆的な取り組みがこれからも続いていきそうだ。

  • 写真:日経電子版で配信されているAIが作成した記事 日経電子版で配信されているAIが作成した記事。日経電子版などの「決算サマリー」コーナーや「日経テレコン」で閲覧できる。日本経済新聞社内ではAIの決算記事について、記者の書いた記事と区別するために、「決算サマリー」と呼んでいる
  • 写真:決算サマリー
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    ケーススタディー1
    AIが活躍する場
    「九州大学×アクトいちごファーム×キヤノンMJグループ」

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