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トップ > 特集 特別対談「人を活かす」栗山英樹さん×坂田正弘 > P3
2012年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任し個性あふれる選手たちを率いながら、2度のリーグ優勝と1度の日本一へとチームを導いてきた栗山英樹監督。彼が実践してきた、選手たちの個性をプロデュースする方法、そして、強いチームをつくる方法とは? キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長、坂田正弘と語り合った。
坂田
栗山さんにとって強いチーム、強い組織とはどういうものでしょうか。
栗山
それもやはり「個人」ですね。一人ひとりがプロとしてやるべきことをやった結果が、組織の強さになるのだと思います。僕はいつも選手に「お前のどんな力によってチームに貢献してくれるんだ?」と聞くようにしています。「自分の持ち味はこれだから、こう動く」ということを全員が自覚できなければなりません。
坂田
中田翔選手を根気強く四番に据えているのも、自覚を促すためですか。
栗山
そうです。彼は生意気で態度が大きいと思われていますが、本当は優しくて、とてもいいやつなんですよ。調子が悪い時に、「四番を外してください」「二軍に落としてください」と自分から言ってくることもあります。でも僕は「翔、それは逃げだ」と言います。数字は今のところ決して良くはありませんが、彼は日本代表の四番になれる男だと僕は思っています。そのくらいの能力があるということを自覚してほしい。四番で使い続けてきたのは、そのメッセージを本人に伝えるためです。
坂田
もう一人のスター選手、斎藤佑樹投手も、栗山さんが期待を懸け続けている選手の一人ですよね。
栗山
僕は野球解説者だった頃に何度も彼を取材して実力を知っていましたから、監督に就任した最初の年に開幕投手を託したんです。「開幕頼むぞ」という手紙を書いて渡したら、彼は号泣していました。その姿を見て、「こいつとは裸で向かい合おう」と思いましたね。おっしゃるように、彼は高校、大学とずっとスター選手でした。それゆえに「斎藤佑樹」という名前と今も闘っているのだと思います。プロの世界では、球速がそれほどなくても、打たせて取ることは十分できます。しかし彼は「斎藤佑樹はこうあるべき」というイメージが強いがために、力で勝負にいって打たれてしまう。そんな場面がこれまでは多かったんです。それでも、彼はやる男だと僕は信じています。「今の自分」を生きることができれば、本来の実力を発揮できるはずです。去年の秋は好調でした。今シーズンは大いに可能性があると思います。